Ｎｏ．１２【inzmGO】CEN (ページ20)

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「霧野……？」

　倉間先輩が驚いた顔をするのも無理はない。こういう場面で霧野先輩が神童先輩に反対するのは珍しいから……というか、反応から察するに無かったんじゃなかろうか？
　私はじっとりとした汗が自身の背中を流れるのを感じた。一乃さんと青山さんが不安な顔で霧野先輩の言葉の続きを待つ。

「勿論一乃と青山が戻ってきてくれるのは嬉しい。けどこれからは何があるか分からない……、ホーリーロードが終わるまで様子を見てもいいんじゃないのか」

　霧野先輩は警戒しているんだ──だってこの二人はアルティメットサンダーの存在を知っていた。例の一件に関わっているかもしれない。

「……霧野が言いたい事は分かる。だけど俺は二人の入部を認めようと思う」
「神童……！」
「円堂監督は言っただろ、サッカーをやりたい奴が入るのがサッカー部だって。それに、俺達がやろうとしている革命はまさにこういう事じゃないのか？」
「どういう事だ」
「勿論ホーリーロードで優勝して、イシドシュウジから聖帝の座を奪う事は重要だ。けど俺は思う。本当の革命は、俺達のサッカーを見た人がサッカーの素晴らしさを思い出してそれを取り戻す為に立ち上がってくれる事じゃないかって」

　神童先輩はぐるりと部員全員を見渡した。

「俺達だけじゃ革命は起こせない。革命には、サッカーを愛する者皆の力が必要なんだ」
「そうかもしれないが……」
「まーいいんじゃない？戻ってきたんだから。やっぱ、仲間は一人でも多い方がいーんだし！」
「……分かったよ」

　浜野先輩が努めて明るくそう言って、暗い顔の霧野先輩と肩を組んだ。

「ありがとう神童、皆……！」
「これからまた宜しくお願いします！一乃先輩、青山先輩！」
「ああ、宜しく……！」

　松風と一乃さんが硬く握手を交わす。朝練はもう時間が残されていない為有耶無耶になり、そのまま駐輪場からサッカー棟へと私達は移動する事になった。

「そういえば剣城君、サッカー新聞におっきく載ってたよね」
「……ああ」
「お兄さんに持っていかないとな」
「必要ない。……もう見ていたそうだ」

　少し後ろで葵ちゃん、松風、剣城の三人がそんな話をしている。

「……」
「反田さん」
「ヘッ！？何……？狩屋君」

　剣城に話しかける機会を伺っていると、狩屋君から声をかけられ、思いっきり狼狽してしまった。

「何でそんな驚く訳？俺なんかした？」
「いやー……」

　不思議そうな顔で信助が私を覗く。