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私は反田典子。よく名前を「のりこ」と間違えられます。因みに尊敬している倉間先輩は
やっぱり名前はちゃんと呼ばないと誰だって嫌な思いをしますよね。
「この裏切り者──」
「違うよ。私の名前は、は、ん、だ、て、ん、こ」
そう、ちゃんと呼んでくれないと──嫌な気分になる。
私は私を蔑ろにする人が嫌いです。
サッカーを利用する人が嫌いです。
「私はお前達の革命とやらの道具になる為にシードになったんじゃない」
関西地方でも指折りのサッカー強豪校、京都の漫遊寺中学校。だが「サッカーは心身を鍛える為の修業の一環にすぎない」という信条を掲げ、フットボールフロンティア時代から今まで公式大会に参加した事はなかった。
そんな彼らが今回のホーリーロードに参加を表明したのは、塔子ちゃんの手引きで『革命』を起こす為だった。勝敗指示に基づいたサッカーは、漫遊寺から見ても歪な在り方だったのだろう。
フィフスセクターが彼らに出した大会出場の為の条件は一つ。
私を入部させる事。その後は試合に出そうが出さまいが、雑用をさせるだけでも咎はない。
「おいで──」
嫌いな奴らとのサッカーでも、それでも楽しくて仕方がない。火照る体から己の化身が現れる。
欲しくてならぬ。
「お前にとってのサッカーとはなんだ」
我にかえると、辺りは酷い惨状だった。問いかけてきた彼は私と同様に傘も差さずにグラウンドに立っている。
「私にとっての、サッカー……」
周りには泥と傷だらけの漫遊寺中の皆が倒れている。
「サッカーは、私です」
かくあれ、と生み出された存在。
「殺してください……」
豪雨で声はかき消されただろうから、きっと聞こえてはいないのだが、それでも悲痛な表情で彼は私を抱き締めた。
彼は聖帝、イシドシュウジ。
「サッカーできないくらいなら、死んだ方がマシです」
どうして私だけこんな思いをしなくてはいけない？
ただ、ただサッカーがしたいだけ。
欲しくてならぬ。
私は私の為に、
私はイスカリオテのユダ。
十字架なんて背負わず首を吊るの。
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作者名：やに | 作成日時：2022年9月11日 21時
