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「でも、ありがとね」
「いいよ全然！ 」
「……あのさ典子ちゃん。僕の特訓付き合ってくれない？ 」
「いいけど、今から？ あんまり遅いとお母さん心配するからなぁ」
「じゃあ朝練の前と昼休みにやろ！ 」
「分かった！ 何の特訓するの？ 」
「僕の必殺技──ぶっとびジャンプを完成させたいんだ！ 」
雷門の朝練が始まる前に使えるサッカーコートといえば河川敷だ。この河川敷は今や伝説となった円堂守率いるイナズマジャパンが特訓した場所として有名で、河川敷前駅という電車が通る路線が引かれている。河川敷の反対側の出口にはサッカー女神像があり、私と信助はここで待ち合わせする事になっていた。
「おはよ！ 」
「おはよー！ 典子ちゃんてっきり遅刻するかと思ったのに、僕の方が遅く着いちゃった」
「失礼な、人を遅刻魔みたいに！ ほら、早く特訓始めよ」
「うん！ 」
「お前、反田典子か？ 」
見知らぬ少年四人に名前を呼ばれる。
「え……そうですけど」
「……あまりあの人を困らせるなよ」
「へ？ あ、ちょっと」
「行っちゃったね……、何だったんだろうアイツら。知り合い？ 」
「全然知らない人……」
「変なの、気味悪いね。早く河川敷行こ」
「うん……」
私は持ち寄ったサッカーボールをネットに入れたまま木に縛り付ける。
「霧野先輩が言ってたじゃん？ 意識が頭をボールの位置に持っていこうとし過ぎって。これだったらタイミングに邪魔される事なく、踏み込みとヘディングの練習に力を入れられるんじゃないかなぁ」
「やってみるよ！ 」
「ある程度やったら本番想定で私が蹴ったボールでやるようにしよう！ 」
「うん！ 」
体が温まってきた辺りで、吊り下げたボールから飛んできたボールへの対応練習に切り替える。
「行くよー！ えいっ！ 」
「たああーー！ 」
「何やってるのー？ 」
「──いったい！ 」
突然横から声が聞こえてきて、集中が途切れた信助がボールに顔をぶつけてしまった。
「あっ、ごめーん！ 」
声の主は松風君だった。彼は急いで階段を下り、信助に駆け寄る。
「大丈夫？ 」
「ありがとう」
「必殺技の特訓してるの？ 」
「うん。昨日の帰り道にやろうって決めて、今日から信助の特訓に付き合ってるんだ」
「そうだったんだ」
「もっと頑張らなきゃと思って。天馬みたいに……。昨日の試合、僕は万能坂の攻撃を止められなかった。必殺技があれば、もっとチームの役に立てると思うんだ」
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
