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剣城が立ち去るのを見届け、イシドは口を開いた。
「……雷門には、風が吹き始めている様だね」
「彼らは中学サッカーにおいて、最も尊重すべき第五条を蔑ろにしています。見せしめの為にもサッカー部そのものを潰すべきではありませんか？ 」
「いいや……雷門にはシードが
「……」
「三人目のアイツは……恐らく様子見の段階かな？ こちらで強行手段に出れば、彼の努力を踏み躙る事になる。それは酷だろう？ 」
「はっ」
「何より、雷門の名はサッカー少年達の憧れだ。影響力は計り知れない。潰すよりも活かして利用した方が、我々の役に立つ」
「聖帝の仰せの通りに」
「よって雷門には更なる試練を与える事にした」
「……と、申されますと？ 」
「あの男と戦わせる」
「あの男……？ 」
「鬼道有人、と言えば伝わるか？ 」
「帝国学園の……！ では、その様に手配します」
「ああ」
.
.
.
「「「「カンパーイ！ 」」」」
私達の声とコップがぶつかる音が綯交ぜになって部屋に響いた。
「準決勝進出おめでとう」
彼女は木野秋さん。松風君が暮らしているここ木枯らし荘の管理人だ。秋姉と呼ばれている。
「これは私からのお祝いよ。ストロベリーロイヤルトリプルケーキ」
秋ちゃんがテーブルに置かれた白い箱を開けた。これでもかと苺が贅沢に乗っているケーキに私達は身を乗り出す。
「わぁ、美味しそう！ 」
「俺これもーらいっ」
松風君が苺を一個摘んで食べた。葵ちゃんが怒って天馬の肩掴んで揺さぶる。
「あぁっ、その苺私も狙ってたのに！ 」
「じゃあ僕こっち、あむ」
「あーっそれも！ 」
「うわ、甘ーい！ 」
「典子ちゃんまでー！ 」
葵ちゃんが怒る姿が可愛くてついついやってしまった。
万能坂戦がついさっき終わり、私達は松風君に誘われて祝勝会を行っている。
「剣城も来れば良かったのに」
「仕方ないじゃない。誘おうとした時にはもう帰っちゃってたんだから」
「キャラバンにも乗ってなかったしね」
試合後に控室で着替える姿を見て以降、剣城がどこへ行ったのか知る人はいなかった。
私は秋ちゃんに切り分けてもらったケーキを受け取る。重量感に驚いた。よく見てみるとスポンジの間に挟んである苺の量も凄い。帰ってから晩御飯入るかな……。
「反田さん食べないの？ 俺貰っちゃうよ？ 」
「い、今から食べるんだってば！ 」
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
