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「手と手を繋いでー」
「ああそれは無理だろ」
「そんな霧野先輩まで！？ 」
ピロリ、と再びイナッターが更新された。今度は円堂さんの投稿だ。
『みんなよくやった！ 剣城も今日から本当の雷門イレブンだ！ みんなに何か一言言っておけ。』
『＠えんどう …よろしくお願いします。』
『＠つるぎ うん！ よろしくな。』
こうして携帯を触れていると言う事は、優一君を無事に病院へと連れて帰れたのだろう。私も松風に続いて剣城によろしくと返信をぶら下げた。
「……あれ、円堂監督がまだ何か投稿してる」
「え？ 」
霧野先輩の言葉通り、円堂さんは間を置かずに投稿を連ねる。
『そしてこれは連絡事項だ。明日は雷門中じゃなく、帝国学園に集合してくれ。詳しい話は向こうについてから説明する。』
『＠えんどう て、帝国！？ どうしてですか！？ 』
「なんでまた帝国に……？ 」
「鬼道さんのサイン会開催、とか……？ 」
「だったら嬉しいけど……」
二人で悩んでいても解決する問題ではない。とにかく私は松風達を待たせているのでここで霧野先輩とは別れた。
結局円堂さんはこの投稿を最後にパタリとイナッターから姿を消してしまい、速水先輩の質問に彼からの返信が来る事は無かった。
不在着信
不在着信
不在着信
木枯らし荘につく頃にはパーティーはお開きになりつつあった。そりゃそうだもう六時をとうに過ぎている。
「遅いよ典子ちゃん！ 何してたのー」
「ご、ごめん……また迷ってて……」
「またぁー？ もう、しょうがないなぁ」
「もう僕達帰るよ？ 」
「うぅ、次からはこうならない様にするから」
葵ちゃんと信助に謝罪を入れて、そして帰る姿を見送りつつ、私は松風が持ってくるであろう取り置きされていたチョコケーキを待っていた。
「ごめんお待たせ！ あれ、二人は」
「先に帰っててって言っといたんだ」
「ほんとに遅くなってごめんね。これ秋姉が作ってくれたチョコケーキ！ 」
「ありがとう！ 」
「送っていこうか？ 」
「いいよ〜、松風が帰る時危ないじゃん！ 」
「でも女の子だし……」
「大丈夫大丈夫！ ケーキありがとね、また明日！ 」
「う、うん！ 気をつけて帰れよ！ 」
逃げる様にして松風に別れを告げる。
不在着信
不在着信
不在着信
松風から貰った白い箱を開けて、ケーキに手を付ける。上に乗ったアラザンが奥歯に砕かれてジャリジャリと音を立てて、溶けた。
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
