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狩屋君のボディバランスには目を見張るものがあるが、それがフィフスセクターのサッカー英才教育の成果かと言われると疑問が残る。
「私は何となく違う気がします。上手くは言えないですけど、狩屋君は本気ですから」
「本気？ 」
「サッカーに対して、です」
「……そうだな。アイツのサッカーに対する熱は、本物だろうけど」
「でも霧野先輩がそう思うって事は、やっぱり何か理由があるんですよね？ 」
「……あぁ。これは他の奴には言わないでほしいんだが」
そう言うと周りに誰もいない事を確認して、霧野先輩は声のトーンを落とし語り始める。
「狩屋が神童に嘘をついたからなんだ」
──典子は知らないだろうけど、アルティメットサンダーの作戦書は神童のロッカーじゃなくて元々南沢さんの荷物が入ってた空きロッカーに入れていたんだ。これは俺と神童、音無先生しか知らない筈だった。
その空のロッカーから、あの日の昼休みに俺(霧野先輩)が作戦書を盗んでいる所を目撃したと、狩屋は神童に言ったらしいんだけどさ、
俺その日の昼休みには稲妻総合病院に行ってたんだ。万能坂戦で痛めた足を診てもらってたんだよ。レシートもあるから見せてもいい。
そうだ、お前の言う通り。浜野に心労かけたくなくて神童は自分のロッカーに放課後まで作戦書があったって嘘をついた訳だが……狩屋はそれが嘘だって知ってたんだ。そんなの俺達以外には盗んだ犯人しか知ってる筈ないんだ。
だから俺は狩屋はシードだと疑ってる。
ただ、作戦書を盗んだ犯人が狩屋だとしても……ちょっと引っかからないか？ アイツはあの日入部したんだ、アルティメットサンダーの事を知ってる訳ない。
典子、頭こんがらがってるだろ。……落ち着いた？ じゃあ続けるぞ。
アルティメットサンダーが完成したらマズいと知ってる奴──サッカー部を抜けた奴がフィフスセクターに情報を売ったのか──それとも
前者はまだいいけど、後者だったら。
知らない内にジワジワと俺達雷門は崩壊する！
「シードが潜んでるかもしれないって事ですか……！？ わっ、私はシードです！ 」
「落ち着け！ そんな事は分かってる」
「ですよね！？ 」
「シードが隠れてるにしても何人いるのか。こうして疑心暗鬼になるのも、敵の掌の上で転がされてる気がして……クソ！ 」
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
