Ｎｏ．１２【inzmGO】BEORC (ページ44)

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「狩屋は来る？」
「さっき剣城君を誘ってたパーティー？」
「そうそう」
「ごめん。俺この後用事あってさ」
「そっか、残念」

　キャラバンへの道中で狩屋君は松風の誘いを断った。

「また今度誘ってよ」
「うん！」

　松風が荷物を持ちながらキャラバンへと乗り込むと、ふと狩屋君は振り返って私と真正面から向き合うと、いつもの様に微笑んで手招きをしてきた。不思議に思いつつ近くに寄ると、彼はそっと私の耳に手を当てて囁く。

「いつ裏切んの(・・・・・・)？」

　ゾッとする程の冷たい声に反射で後退ると、そんな私を狩屋君は気遣う様な優しい瞳で見つめてきた。

「何、どうしたの？」

　そしてタイミング悪く私の懐で携帯が鳴った。いつまでも鳴り続けるそれに狩屋君が気を遣って──いや、そんなん顔じゃなかったな──うんざりした顔で、こう言った。

「出たら？」
「……」
「なんだよその表情。大丈夫？」
「え……」
「顔色。かなり悪いけど」

　私の顔に狩屋君の手が伸びる。額に触れる寸前で別の腕が狩屋君を止めた。

「何してるんだ狩屋」
「霧野先輩」
「別に……？なんでもありませんよ、せーんぱい」

　あれ、狩屋君ってこんなキャラだっだっけ。霧野先輩と話す時だけ謎の棘がある。

「反田さんが体調悪そうなんです。座席、前の方にしてあげてください」
「分かった。典子、大丈夫か？随分と顔が青いぞ。ほら、掴まれ」

　生返事をしつつ私は霧野先輩の手を借りながらキャラバンへと乗った。音無先生が隣で体温計を準備している間も、携帯は鳴り続けていて私は気が気ではなかった。

.

.

.

「お前にとってのサッカーとはなんだ」

　バケツをひっくり返したかの様な雨の中、彼からそんな問いをかけられたのは覚えている。

「私にとっての、サッカー……」

　きっかけは平凡で、皆と同じ。

『試合終了ッーーーー！！フットボールフロンティアインターナショナル優勝は、イナズマジャパンです！！』

　イナズマジャパン──青いユニフォームに、黄色のイナズママーク。
　いつか私もと、夢を見た。
　サッカーが好きになった。
　豪炎寺修也に憧れた。
　皆と同じの筈だった。

「サッカーは、私です」

　私の全て。私そのもの。
　足元に横たわる皆と私は、どう見たって同じじゃなかった。

「殺してください……」

　私は生まれてくるべきではなかった。