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「よくやったなお前ら！ 」
ベンチへと戻ると私と松風は水鳥さんの腕に捕まった。信助は車田先輩に頭をガシガシと撫でられている。自分の気持ちを抑えて送り出した後輩が点を取ったのだ。誇らしいだろう。
「典子」
「神童先輩」
「お前との特訓の成果が少しでも出たかな」
そう言って神童先輩は微笑んだ。さっきの化身のぶつかり合いで、先輩は相手の化身に打ち勝った。まだ私から化身を引き出すには至っていないが、それでもシードの(多分だけど、帝国のキャプテンはシードだよね？ )化身使いを止められるレベルになっている。
もっともっと、強くなるんだ。
「神サマ、麗しい……♡ 」
バシャバシャバシャと今日も茜さんのカメラは絶好調である。苦笑いを浮かべていると、彼女はふとシャッターを押す手を止めて何やらカメラを操作しだした。
「これ、皆の活躍」
見せられたのは剣城がアルティメットサンダーを決める姿や松風、信助、そして私のシュートシーンだった。
「わぁー！ 撮ってくれたんですか！？ 」
「あとで現像してあげるね」
「ありがとうございます！ 」
「ねえねえ剣城、これ優一君の所に持っていこうよ！ 」
「ハァ。……やめろ」
「そういうのは黙って持っていかなきゃだよ典子」
「そっか、断られるのは分かりきってるもんね」
「絶対にやめろ」
ふとカメラロールの中に松風と剣城がハイタッチしている場面が撮られたものがある事に気づく。剣城は薄っすら笑っていていつもの仏頂面じゃない。お前こんな顔もできるんだなと、嬉しい反面何故か寂しさも感じた。
「剣城どこ行くの？ 」
控室ではなく観客席への通路へ向かう剣城に信助が訊ねる。
「そこの馬鹿に聞け」
そして私はギロリと睨まれてしまった。うぅ、悪かったって、そんなお兄さんを誘拐する様な真似して……。
「僕にパスくれてありがと！ 」
「……ふん」
「あっ、帰ったら俺の家来ない？ 皆で決勝進出お祝いしようと思ってるんだ。剣城も一緒に、どう？ 」
「ケーキもあるよ！ 松風さんズバリ今日のケーキは？ 」
「チョコ！ 」
「だって剣城君！ 」
「行かねぇ。……
葵ちゃんを含めた皆でパッと目を輝かせ、顔を見合わせる。
次。そうか、剣城は次も──
「剣城！ 」
「……なんだ」
「今日はありがとう。帝国に勝てたのは、やっぱりお前が来てくれたからだって、思ってる」
松風の言葉を背に剣城はグラウンドを立ち去った。
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
