Ｎｏ．１２【inzmGO】BEORC (ページ35)

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この間迷わずに帝国まで行けたからと油断した。ここはどこだ。

『雷門のキックオフで試合開始です！』
「ヒィー！始まっちゃった！」

　ビルに備え付けられている液晶が丁度雷門と帝国の中継を流す。

「落ち着け典子ちゃん。ちょっと待ってくれ、無闇に動くんじゃない！俺が携帯で経路を調べるから！」

　私は優一君の車椅子を押す手を止めた。そう、今私と優一君は稲妻総合病院から帝国に向かっているのだが、方や方向音痴、方や外出をあまりしない人間が揃った結果見事な迷子になってしまっている。

「ごめんなさいぃ」
「迷ってしまったものは仕方ないさ。ほら、その角を曲がれば大通りに出るらしいぞ。急ごう！」

　私が優一君と交わした約束とは、試合観戦の為に事前に外出許可を病院から取っておいてほしいというものだった。

『テレビじゃなくて、直に剣城を応援してあげてくれませんか？』
『えっ。いいけど、何か理由があるのか？』
『はい。優一君、フィフスセクターって知ってます？』
『フィフスセクター？なんだいそれ』
『サッカー協会から枝分かれした機関なんですけど、行き過ぎたサッカーの人気を制御する為に試合の勝敗や展開を予め決めてしまう組織です』
『なっ、なん、だそれ！？そんな組織があるのか？馬鹿げてる……！』
『三年前くらいから本格始動したので、優一君は知らなくてもしょうがないです。で……私と剣城はそこの組織に所属するシードって、特別な教育を受けた選手で』
『……それで？』
『……優秀なシードには、色んな恩恵が与えられます。私だったら公式試合への出場が認められたり。通常は手に入らないものが、手に入ります。……お金とかも』

　この時の優一君の顔は思い出したくない。

「典子ちゃん、電話が来てる」

　ヒヤリと嫌な悪寒が背中を走ったが、優一君に促されて自分の携帯を確認するとそこに表示されていた番号は見覚えのないものだった。ま、まさか音無先生？どうしよう遅刻の連絡をするの忘れていた。

『どこにいる！！』
「ギャーー！！」

　通話に出た瞬間、スピーカーにしたかと耳を疑う程の声量に思わず叫んでしまった。声の主は剣城だった。どうして私の携帯番号を知っているんだ！？

『お前、兄さんをどこに連れ出したッ！？言え！』
「試合に出てるんじゃ」
『俺の質問に答えるのが先だどこにいる』

　まさか剣城は今稲妻病院にいるのか？じゃなきゃ私が優一君と外出していると知らない筈だ。