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「聞いたよ、天河原中との試合に出てたんだろう？ 前代未聞の女子選手が大活躍中って、ちょこちょこ話題になってる」
「そうなの！？ え、いやぁでもあの試合は私全然何も出来なかったというかー」
「ねぇ、どうして君はマネージャーじゃなくて選手になったの？ 」
「サッカーやりたいから！ 」
太陽が鳩を豆鉄砲を食らった様な顔をした。
「……ッぷ」
次の瞬間太陽は堰が切れたみたく笑いだす。食い気味に答えたのがそんなにツボに刺さってしまったのだろうか。
太陽が壊れてしまったと思い不安になる私だったが、彼は一頻り笑った後私を真っ直ぐに見つめた。
「フフフッ……いや、それしかないよね」
「うん。変なのー……」
「ごめんね。典子ってもっと怖い子なのかと思ってたけど、全然そんな事なくて安心した」
「怖い？ 初めて言われたや」
怖いっていうのは剣城とか磯崎みたいな顔面をした奴らに向けた言葉なのではないのか。
「態々男子サッカーに乗り込んでくるくらいだから、どれだけ男勝りの子なんだろうって」
「……成程、それは確かに……」
「僕は好きだよ、典子の事」
水色の瞳が炎の様に怪しく揺らぐ。
「似てる。僕と」
「それは……、※ナルシ入ってない？ 」(※ナルシスト)
「む、入ってないよ。……典子。僕の病気、段々良くなってきてるんだ」
「そうなの？ 良かったね」
「病院を出たら、本気でサッカーしよう」
「勿論！ いいよ、楽し」
「絶対だよ！？ 嘘つかないでね、君とは本気でサッカーしたいんだ！ 」
太陽は身を乗り出して、必死に、縋りつく様に叫んだ。切羽詰まった彼の様子に少し困惑しながらも私は頷く。
「うん、約束する」
「約束破ったら？ 」
「死ぬ！ 」
「ははは……やっぱり怖い子だったかも」
雷門中に戻ると、やはりこっぴどく神童先輩に叱られてしまった。ふとグラウンドを見ると松風は円堂さんとシュートの練習をしていた。
「説教はそこまでにしてやれよ。しっかり反省してるみたいだからさ」
「どこがだ」
折角霧野先輩が仲介に入ってくれたのに、神童先輩は私がグラウンドを盗み見ているのに気づいてより一層不機嫌そうな顔になる。
「て、典子……」
「違うんです霧野先輩！ 神童先輩の話もちゃんと聞いてました！ 」
「ハァ、もういい。どこに行ってたんだ」
「そのぉー……」
「言えないのか」
「本当に違うんですー！ 」
「ったく、神童。もういいって言っときながらまた説教モード入ってるぞ」
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
