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「あ、危ない所でした」
何の話をしていたんだったっけ？ そうだ、アルティメットサンダーだ。
ふとこの前の騒動を思い出す。全員がお通夜みたいな顔をしていた。あの日は三国先輩に話題を攫われてしまったって有耶無耶になってしまったので、この機会に聞いておこう。
「そう言えば、結局作戦書って部室にあったんですね」
「ちょっと！ その話題は」
「えっ」
「や、いいって速水」
速水さんが珍しく大きな声を出したので面食らってしまった。
「隠す方が怪しくね？ 」
「でも……」
「あ、あのすみません。……何かあったんですか？ 」
「……それがさ」
──あの日部室の鍵当番は浜野先輩だった。
「俺が、俺が鍵を閉め忘れてたのかも……。放課後の部活始まる前は確かに閉めたけど、朝練の後は……バタバタしてたし、もしかしたら」
紛失の原因を作ったかもしれない浜野先輩は、まず皆に謝罪したのだという。万一作戦書が盗まれたのだったら、朝練の後だというのが浜野先輩の言い分だった。
しかし古株さんは大掃除をする際にマスターキーで部室を開けたと言っていた。これが大体午前中の話。
それに私は確かにこの目で、朝練後、一軍と二軍の部室を施錠し、鍵を職員室へ返しに行く浜野先輩の姿を真横で見ていたのだ。閉め忘れの可能性は限りなく低い。
誰かが職員室から鍵を持ち出して一軍部室を開けて、作戦書を盗ったのではないだろうか？
「あんま気負うなよ！ 何かの拍子に無くなっちまってたんだろ」
「去年の大掃除とかでな。そんな都合よく泥棒なんか入るもんか」
「だド。それに、古株さんが別の段ボールに入れてるのをうっかり忘れてただけかもしれないド」
三年生達が浜野先輩を励ます様子が難なく想像できる。
「ごめん」
その謝罪の言葉はいやに響いたらしい。
そして青ざめた顔で霧野先輩が自身の鞄から取り出したのだ、アルティメットサンダーの作戦書を──
「なん、で霧野先輩が？ 」
「それが分からないから皆怖いんです！ 霧野君も可哀想なくらい真っ青でした。もし彼の立場が自分だったらと考えると……生きた心地がしません……」
「で、でもそんな事しても何の意味も無くないですか？ 間違えて鞄の中に入れちゃったんじゃ」
「だとしても、他人のロッカーを勝手に開けた事には変わりません。……作戦書は神童君のロッカーに入ってたんですから」
「俺も霧野はやってないと思う。けど、そうなると一番怪しいの俺なんだよねー」
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
