Ｎｏ．１２【inzmGO】BEORC (ページ20)

今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:6,698 hit

▼ ページ20

「アルティメットサンダーの作戦書が見つかったんだ」
「ホントですか！良かったですね、どこにあったんです？」
「それは……」

　神童先輩が言い淀んだ。葵ちゃんと一緒に首を傾げていると、三国先輩がパンと手を叩く。

「何にせよこれで帝国戦に向けて動き出せるぞ！明日から忙しくなるぜ」

　無理矢理話を切り上げられてしまったが、皆の顔色が悪い気がして口を出せる雰囲気ではなかった。

　アルティメットサンダーの特訓が始まって忙しない中、やっと訪れた日曜日。

「あ、来たね反田」
「おはようございます！」
「元気ですねぇ、ホントに君は」
「ありがとうございます！今日は大漁目指して頑張ります！」
「それはいいですけど釣った魚はリリースするんですよ？」
「食べないんですか？釣るのに？」
「チッチッチ。食べるだけが釣りじゃねーのよ。魚との駆け引きを楽しむのが玄人だぜ、反田」
「よく……分かんないけど、かっこいいです！浜野先輩！」

　私は浜野先輩から竿を受け取る。そう、今日は浜野先輩と速水さんの釣りに交ぜてもらったのだ。餌の付け方を習い、いざ堀に糸を垂らす。

「いやー嬉しいね。誘えど誘えど全敗だったから」
「反田が来るって言った時は倉間君が微妙な顔してましたね」
「来ればいいのにな倉間も」
「難しいでしょ。倉間君達はアルティメットサンダーの特訓で忙しいですし」

　日曜日は基本的に休日だが、アルティメットサンダー習得目指して先輩達は今日もグラウンドを駆け回っている。信助と松風もぶっとびジャンプの特訓を河川敷でやっているので、私も後から参加する予定だ。

「アルティメットサンダーなぁ……」

　ぽちゃんと浜野先輩が竿を引き上げた。どうやら餌が溶けてしまったらしい。
　三人並んで、風が作る波紋をじっと見つめる。竿が全く、うんともすんとも言わないので本当に魚がいるのか疑わしくなってきた。

「……このままでいいんでしょうか」
「任しときなって。ここの釣り堀はよく釣れるんだぜー」
「釣り堀の話じゃなくて、サッカー部の話ですよ」
「ぁあ、そっちね。……いんじゃね？」
「え」
「俺ー、天馬に乗っかってもいっかなーって思ってるけど」
「俺は、不安です」
「速水さあ、お前サッカーどう思ってんのよ？」
「えっ」
「……どうなのよ？」
「ホントは、自由にやりたいんですよ。そりゃ勿論」
「だよな」
「あっ」
「……って、反田起きてるかー？」

　浜野先輩の声に意識が戻る。