▼ ページ19
「えっ」
驚きはしたが、ほんのちょっぴり、そんな気がしなかった訳ではない。剣城と私のキック力はどっこいどっこいだ。……それは盛ったかもしれない。
「やはり連携を熟してこそのタクティクスです。練習へ来ない奴に勝敗の鍵を握らせるのは怖い。典子なら蹴りの威力は十分だし、任せてみる価値はある」
「まぁ、さっきのシュート見ちゃったらねー。反対する理由は無いかなぁ」
「どうだ典子。やってみないか」
「はい！ はいはい！ 私！私アルティメットサンダーの最後蹴りたいです！！」
「いいですよね、円堂監督」
「……そういうと思ったぜ！典子！ 」
「わぁ！ じゃあ！」
「却下！ 」
「えぇぇえええええッーーーーー！？」
その場にいた全員があんぐりと口を開けた。
何回やればいいんだろうか、このくだり！
「アルティメットサンダーの特訓もだが、他の皆もそれぞれのレベルアップに向けて特訓だ！ 」
とにもかくにも、作戦書が見つからない限りタクティクスの特訓は始められない。
「まだ落ち込んでるの典子ちゃん」
「だってー……」
「……そうだね。理由くらいは教えてくれてもいいのにね」
「うん……」
葵ちゃんが椅子の上に蹲る私の背中を擦ってくれた。
折角神童先輩が期待してくれたのに、円堂さんは私の何が気に入らないのだろうか。
「試合には出られるんだから、別の方法で頑張ってみようよ」
「別の方法って？ 」
「ほら、典子ちゃんの必殺シュート！ アルティメットサンダーって強いストライカーが後ろに下がっちゃうんだよね？ だったら参加しない典子ちゃんは、タクティクスが決まった後、点を取ればいいんじゃないの？ 」
「あ……確かに」
「サッカーって、そういう一人一人の役割分担が大事でしょ？ 十一人もいるんだし、一人で全部やろうとしなくていいじゃん」
「……そうだね。うん、ありがとう」
携帯からピロリと電子音が鳴る。二人同時と言う事はイナッターだろうか。
「浜野先輩が誰か日曜日釣りに行かない？ って誘ってる」
「また？ 浜野さんほんと釣り好きなんだね」
ふと水鳥さんの言葉を思い出す。
「行ってみようかな、釣り」
「え！ 信助との特訓は？ 」
「あっー、そうだった！ 」
「まあでも、良いんじゃない？ 一日中釣り堀って訳じゃないだろうし、気分転換って事で。帰り道信助に言ってみようよ」
帰る準備も終わり、二人揃って部室を出ると何やらサロンが騒がしかった。
「どうしたんですか？ 」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 33人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
