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「これで最後の組だったな。休憩だ！ 」
松風が狩屋君にボトルを渡す。
「狩屋君のタックルにはやられたよ、凄いね」
「練習だから何とか止められたんだ。まぐれだよ」
「いや、あのボディバランスは中々のものだ」
「はは。どうも」
「実力は認めるけど、ちょっと強引だったぞ」
神童先輩に褒められ照れる狩屋だが、そんな彼に霧野先輩は少しだけ厳しい言葉をかけた。確かに万能坂戦でのダメージがまだ残っているだろう松風にあのタックルは重たかった気もするが、そんな事情を狩屋君は知る由もないので気の毒にも思う。
霧野先輩の足は歩く分には支障がないとはいえ練習には参加できないレベルには痛めつけられていた。怪我のリスクがある場面を見て気分がピリついたのかもしれない。
「すみません……気をつけます」
「ところで、アルティメットサンダーのタクティクス作戦書は見つかったんですか？ 」
霧野先輩とマネージャー陣三人が首を横に振った。
「それが全然。今、古株さんと音無先生が一軍の部室をもう一回探しに行ってるの」
「困ったな。タクティクスの内容は皆覚えているだろうが、細かい記述があるのと無いのでは精度に大きな違いが出てしまう」
「どんなタクティクスなんですか？ 」──信助がピョンと飛び跳ねる。
「アルティメットサンダーは、ディフェンス突破に力を発揮する必殺タクティクスだ。まずは数人がパスでボールを自軍に繋ぎつつエネルギーを溜める。そしてストライカーのキックで一気にエネルギーを爆発させて敵ディフェンスのど真ん中に蹴り込む」
「相手ディフェンスを蹴散らすんだド！ そしたら後はシュートを決めるだけだド」
天城先輩がそう言って拳で空を切る真似をした。
「でも、エネルギーが溜まった最後のボールをけるのが大変で……結局成功しなかったんですよね」
「えっ、そうなんですか」
速水さんの言葉に残念な表情を浮かべる松風。
「ちゅーか強力なストライカーがいないと難しいタクティクスだからな。南沢さんでも無理だったし」
南沢、と聞いた倉間先輩の顔が曇った。
「……剣城ならできるかも」
松風の意見に私は相槌を打つ。
「確かにアイツなら……」
「だけど練習に参加する気ねえんだろ。数に入れるだけ無駄だって」
「だったら神童。やっぱりお前がやるのが一番だろう」
車田先輩の言葉に神童先輩は少し間をおき、私を見ながらこう言った。
「俺は典子を推します」
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
