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「勝ち続けるか」
「指示通りに試合するより難しいド」
「だがやるしかない」
三年生の先輩達が言うと気が引き締まる。場の空気は万能坂戦前に比べると雲泥の差だ。
「さぁ、始めるぞ！ 」
朝練が終わり着替えに二軍部室へ向かおうとする私に、浜野さんが寄ってきた。
「ごめんごめん！ 今日の鍵担当俺だったの忘れてたわ。ちょっくら職員室に取りに行ってくっから待っといてー」
「なら私も行きます！ 」
「そ？ じゃ行こっか」
サッカー棟を出て校舎の二階へと繋がる通路を歩いていると、浜野さんが何かに気づいて足を止める。
「一乃、青山？ どしたの」
「浜野さん浜野さん……どちら様です……？ 」
「ん？ あぁ、セカンドチームにいた二人だよ」
小声で尋ねると浜野さんも小声で教えてくれた。セカンドチームとはサッカー部の二軍の事である。
これは最近教えてもらったのだが、サッカー部員が減った原因は入学早々に剣城が暴れたからだそう。(何やってんだよ、もー！ )
そのお陰で私は広々と部室を独り占めできているとはいえ、この人達みたいにサッカー部を辞めた人もいるのだと思うと複雑な心境だ。
「……ちょっと気になってね」
「何が？ 」
「ホーリーロードさ、お前達本気で戦っているだろう？ 」
「……うん」
「やっぱりか……」
「とんでもない事をやっているな」
「そうだな……ハハッ、とんでもないよな」
浜野さんが苦笑いを浮かべた。予鈴が鳴りベンチなどで駄弁っていた生徒達も校舎へと入っていく。
「は、浜野さん行きましょう！ もう今日は遅刻で怒られたくないです！ 」
「そうだった。またな二人共」
一乃さんと青山さんはまだ何か言いたげな顔をしていたが、時間が惜しかった私は大人しく浜野さんの後ろについていくしかなかった。
「ここが部室だよ」
放課後、松風君達は一人の男の子を連れて部室へやって来た。
「君は？ 」
「サッカー部に入りたいんです」
「入部希望者か」
「はい。狩屋マサキです。ポジションはディフェンダー。よろしくお願いします」
部員全員を見渡し名乗ると、狩屋君は柔らかく笑った──のだが、一瞬だけ目付きが鋭くなった気がして、私は首を傾げる。
「そんじゃ、今日の練習は入部テストっすか？ 」
しまった、と松風君が焦り始めた。どうやら彼に入部テストの説明をしていなかったらしい。
「狩屋、お前はサッカー好きか？ 」──円堂さんが尋ねた。
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作者名：やに | 作成日時：2022年8月26日 1時
