▽ ＶＳビースト ページ7
セイバーの炎はアサシンの外皮を撫でるだけ。キャスターの刃も全く届かない。
「的が定まっていないと宝具を打つどころじゃない。少し手を貸してやるとしよう」
彼の手を両手で包む。掌を通じて魔力が流れていくのを感じた。ランサーは私に一瞥をくれた後、すぐに目の前で戦う二人へと視線を戻した。
「夜のとばり、朝のひばり、恋は語らず懐かしむもの。そして勇猛な剣士に、腐るような夢のおわりを」
詠唱による士気の底上げ、宝具強化、魔力増強だ。目に見えて戦う二人の動きが良くなったのが分かる──語弊がある表現だ、実際には見えない。私の目では追いつかないのだから、目に追えない程良くなったと言うべきだ。
「███▛▞▞▚█──！ 」
アサシンの咆哮で空気が震える。しかし先程まで二騎がかりでビクともしなかった怪物が、押されている──ガレス君が左手で目の前の霧を払い、叫ぶ。
「ガウェイン……いや、違う！ お前は俺の、セイバー……俺の刀！ 真名解放──令呪は無いけど、やってくれ！ 」
「分かった。我が主の為だ、本気で斬るとする」
刀が焔を纏って、その一帯だけ霧が晴れる。アーサーはギリギリまでアサシンをひきつけた後に、セイバーの射程圏内から逃げた。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前──我が剣、魔性を斬る物──大江山・菩提鬼殺！ 」
セイバーの宝具は、圧巻と言うべき威力だった。焔は生き物のようにアサシンの体を蝕み、手先足先がみるみるうちに灰燼と化す。再生が追いついていないのだ。
「マスター！ 」
私は右手を掲げた。
「令呪を以て命ずる──穿て、ランサー！ 」
「いいとも。死にたくなきゃ退いてろ雑魚共！ 」
ランサーの声にセイバー達がアサシンから離れる。
「聖槍詐称──
──前回とは比べ物にならない負の感情が、どっと流れ込んでくる。光の螺旋がアサシンを巻き込んで消えるまでの、本当に刹那の間に、一人では決して背負いきれない業が。
ランサーが私の肩を抱いて支えてくれた事で漸く、ほんの少しだけ意識が飛んでいたらしい事に気づけた。
「ッ！？ ランサー、左手が」
私を支えてくれている手が甲虫類の様な禍々しい物へと変わっている。
彼は苦しそうな顔で槍を地面に突き立て、体重を支えていた。
「ガワが解けた。ハッ、気持ち悪いんだったら罵ってくれて構わないよ。腹を立てるつもりも、力も無い」
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しけ(プロフ) - 眠る兎さん» ありがとうございます！ずっとここに残っていると思うので、ふと気の向いた時にまた自作のオベロンと聖杯戦争を駆け抜けて貰えればと思います^^ (8月20日 15時) (
レス) @page25 id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
眠る兎 - とても面白かったです。この作品に出会えて良かったです。時間の作れた時に是非また読みたいと思います。 (8月20日 9時) (レス) @page21 id: e3b5fe12a0 (このIDを非表示/違反報告)
やに(プロフ) - 何者にもなれない者さん» ここまで読んでいただきありがとうございます！ 急ぎ足でしたが一つ完結という形を取れてホッとしております(^^) コメント感謝です…！ (2022年1月31日 0時) (レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
何者にもなれない者 - 面白かったです！最高でした。完結おめでとうございます。 (2022年1月4日 15時) (レス) @page25 id: a6de92b5ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やに | 作成日時：2021年8月31日 23時
