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キャスターの工房は一見童話に出てくるお菓子の家だったが、どうやら幻覚らしい。部屋の中へと招かれるとチョコレートで出来た壁は煉瓦へ、ビスケットで出来ていた床はフローリングへと戻っていく。
夢から現実へ、帰っていく。
「素敵なお洋服ですね。とてもお似合いです」
「ありがとう。キャスターはいつもの鎧を着ていないんだね」
「折角のお茶会なのです。鉄の臭いがしては台無しでしょう？ 」
「つまり戦う気は無いと」
「えぇランサー。だからその槍はしまっておいてください」
すぐ後ろにいるランサーへと視線を送ると、ランサーは少し考えた後槍を消した。
家の奥へと案内されると甘い匂いが鼻をくすぐる。
「マスター、お客様がいらっしゃいましたよ」
キャスターがベッドで横になる老人へと話しかける。彼は耳が遠くなっているらしく、彼女の声量がやや大きい。
老人は私の顔を見て微笑む。
「久しぶりだね。一昨年の大晦日ぶりか？ 」
「へ？ 」
「たまにでいいからとは言ったが、こうも間が空くと忘れられているのかと……」
「……マスターは貴方を愛孫と思っています。合わせてあげてください」
キャスターが私に耳打ちする。黙って頷き、彼の言葉にそれっぽく相槌を打った。
テーブルへ腰掛けるよう促されたので私とランサーはそれに従う。机上にはクッキーやマカロン、サンドイッチが並んでいた。
楽しいお茶会の時間も終わりが近づいていた。窓から差し込む夕陽がキャスターの金髪を照らす。
「私は聖杯を望みません」
「……あっ」
瞬きをしたその一瞬で、キャスターは全くの別人になっていた。身長がうんと縮んで、髪も金から白に様変わりしている。
「私の真名はナーサリーライム。騎士王の姿、権能の一部は呼ばれたマスターの本に影響されたものです」
小さな彼女は一冊の本を抱き締める。
タイトルには「アーサー王伝説」とあった。
「童話という概念がサーヴァントとなった存在。それが君か。通りで俺が知り合いと見間違う訳だ」
「素敵な王子様。どうか、この子が望む終わりを見せてあげて」
「え──な、どうして貴方、消えて」
ランサーに促されてベッドへと顔を向ける。そこには眠るキャスターのマスターがいた。あぁ、そういう事か。
「貴方は私と似ているわ。けど、それじゃ駄目なのよね。忘れられてはいけないもの。私と違って」
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しけ(プロフ) - 眠る兎さん» ありがとうございます！ずっとここに残っていると思うので、ふと気の向いた時にまた自作のオベロンと聖杯戦争を駆け抜けて貰えればと思います^^ (8月20日 15時) (
レス) @page25 id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
眠る兎 - とても面白かったです。この作品に出会えて良かったです。時間の作れた時に是非また読みたいと思います。 (8月20日 9時) (レス) @page21 id: e3b5fe12a0 (このIDを非表示/違反報告)
やに(プロフ) - 何者にもなれない者さん» ここまで読んでいただきありがとうございます！ 急ぎ足でしたが一つ完結という形を取れてホッとしております(^^) コメント感謝です…！ (2022年1月31日 0時) (レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
何者にもなれない者 - 面白かったです！最高でした。完結おめでとうございます。 (2022年1月4日 15時) (レス) @page25 id: a6de92b5ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やに | 作成日時：2021年8月31日 23時
