じゅうに ページ12
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しのぶ姉さんに行くように言われたものの生憎、私には医者としての仕事がある。
｢申し訳ないですが仕事があるので難しいです。｣
我妻さんはそっか、と眉毛を八の字にして明らかに落ち込んでいた。
ズキズキと心が痛む中、しのぶ姉さんだけ笑顔だった。
｢A、お使いを頼まれてもらってもいいですか？｣
これはなにか企んでるな。
｢お使い、ですか？｣
｢えぇ。
薬のもとになる薬草と、包帯などの医療器具が足りなくなっているので。
私とAにしか薬草はわからないでしょう？
荷物が重いことと街が少し遠いので私がいつもは行っていたんですが、如何せん仕事が多いもので。｣
｢わかりました。
今日の仕事はアオイ達に任せておきます。｣
ありがとうございます、と先程よりも笑顔のしのぶ姉さん。
｢あら、大変。
買うものが多くてA1人だと難しいですね。
どうしたものか……。｣
うーんと悩んでいる動作をするしのぶ姉さんの視線の先には……
｢俺に任せてください！！｣
さっきとは打って変わって眉毛がキリリとした我妻さんだった。
｢本当ですか？
今から行っても帰りは日が落ちるくらいなので善逸くんがいるなら安心です。｣
しのぶ姉さん、策士……。
｢あ、善逸くん。
よければとびきり可愛い簪を一つ買ってきてくれませんか？｣
喜んで！！なんて我妻さんは胸を叩くけど意味をわかってるのかな……。
早く準備して行ってくださいと言われたから荷物だけ持って行こうとすると、
｢なんで隊服で行くんですか、街に行くならお洒落くらいしなさい。｣
と、しのぶ姉さんから圧があったので渋々数少ない着物に着替えて少しだけ化粧を施す。
｢A、可愛い。｣
カナヲが褒めてくれたから少しだけ、本当に少しだけ緊張しながら我妻さんのもとへ行く。
なんて言われるだろうか、いつもみたいに可愛いねとか結婚しようとかかな？
｢大変お待たせしました。｣
私を見た我妻さんは目を大きく開けていた。
｢あ、えっと……
い、行こっか！！｣
我妻さんと私はそれから目を合わせることなく街に着いたのだった。
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作者名：あいかわ | 作成日時：2020年4月7日 1時
