桜の花が舞って、

33.声はどこかに ページ34

Aside



風邪が治って、次の日からいつもどおり仕事に行って、帰ってきて、それを何回も繰り返して。

何でもない日常を送る。


でも、やっぱりいつもどおりじゃない。

それは、あの日から俊寛くんの事が頭を離れないから。



「あいたい。」



わざと口に出していってみたりして。


この気持ちがなんなのか自分でも薄々気づいてる。

でも、会いたいからってすぐ会える相手じゃないって事もわかってる。

ライブだけじゃなくて、テレビ、ラジオ、歌詞書いたり、それをカタチにしたり、きっと色々大変だから、私なんかのあいてする暇なんてないだろうし。




ううん。

それは自分に言い訳を聞かせてるだけかな、


本当に私に勇気があるなら、メールなり、電話なり、今すぐすればいいんだ。

でも、それが出来ないのはこわいから。


だって、私は俊寛くんの事が好きだけど、完全に元の記憶に戻ったわけじゃない。


俊寛くんが好きな " 私 " は、きっと " 前の私" なんだ。


私がこの想いを伝えたら俊寛くんはどんな顔をするんかな。



どうしようもないくらい、胸が苦しい。




「こんな気持ちになるなら、思い出してよ。｣



そう自分自身に呟いた声はどこかに消えた。

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