鳥籠の墓場にて/ Rook ページ10
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「あはは！ルーク！」
「ああ！ロア・ドゥ・スプランディッド！」
ドン、と踏み出した片足はやはり彼を捉える事はない。一瞬の間際に赤い微笑みを反射させて一定の速度で逃げ続けていた。現在は体力育成の真っ最中でチェイスタグを楽しんでいた。最初は多くあった獲物も遂には彼一人になってしまった。獣人の身体能力は元来の個体獣の能力に匹敵するが、彼はやはり抜きん出て異常だった。
「やべえ。もう11分経ってんのに。」
「砂浜の追いかけっこみてえ。」
2年の体力育成で単位を取ってしまった彼は現在3年の体力育成に参加している。その為、私と追いかけっこしているのだが、彼が捕まる様子はない。編み込んだ長髪が風に解れて咲き乱れる様は感嘆の絶景に値する。時速15km/hで休む事なく走り続けるのは一種の才能である。ユニーク魔法も使わず、彼の純粋な体力のみで行われる鮮やかな舞踏はいつまで経っても終わる気配はない。捕まえようとしても右に左に軽やかに避けられるばかり。腰の白いタグだけが上下する。何とも感極まる光景だった。くらくらする程に眩しい光景だ。
「きゃ、」
「ふふ、捕まえたよ。」
後5分程経って彼が足の回転を緩めた。其処を狙って身体ごと抱き寄せれば低くて掠れた甘い声を発した。二人でグラウンドに転がって荒い呼吸を繰り返す。絢爛な太陽が私達の汗を照らしていた。遠くから水分補給をしろと野太い声が聞こえる。私達は呼吸を整えながら笑ってその声に応えた。
「ねぇ、ルーク。」
「なんだい。」
幼い子供の様に愛らしい声だった。空は何処までも遠く雲は何処までも高い。眼前に広がる快晴が肺胞を指して呑気に笑っている。心地良い時間。じっとりと滲んだ汗がダイヤモンドダストの様に耳裏に噛み付いた。幸せな時間であった。またとなく、またとなく。ない筈の失せ物を探し回るルンペンの気分だ。
「空が青いね。」
「そうだね。」
パンドラの箱の底に残る希望という最厄の悪魔宛らの朗らかな声で彼は笑う。あまりに残虐だ。ぎしぎしと名も知らぬ鳥が囀る様だった。彼は柔らかく溜息を零すと上体を起こした。無彩色が重なりあって酩酊を謳う。髪の先に付けられている青いリボンは跡形もなく簡素な髪ゴムで纏められている。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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鵯(ひよどり)(プロフ) - toraさん» 勤勉なる原書様、ご機嫌麗しく御座います。もう一つの方のコメントも大変有難うございます。お気に召していただき光栄に御座います。様々なカテゴリーを無造作に飛び回っていますので、いつかまた貴殿のお気に召す作品を認められたらと思います。 (2022年3月6日 2時) (
レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
tora(プロフ) - 何故、星に色がついていないのですか？？好き。貴方が書かれる文章とても好きです。 (2022年3月5日 23時) (レス) id: 57d5a3265f (このIDを非表示/違反報告)
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