花蜘蛛のパフェ/ Idia ページ16
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月さえ差し込まぬ暗黒の支配する空間だった。一際豪勢に作られた室内は150年位前の嘆きの島の貴族の執務室の様に豪奢だ。100年の歴史を誇る我が学舎が出来た当初からあるのかもしれぬ。ならば作った奴等の心算は預かり知らぬものだ。何より趣味が悪かったと言わざるを得ない。僕はただ肘を付いて静閑していた。僕はただの監視員及び責任者として此処へ呼ばれて座っているのである。
「メル、紅茶を淹れて頂戴。」
「御意。」
彼の側には美しい断面を見せる外連味のあるチョコレートパフェが鎮座している。滑らかなカッティングチョコレートが最新鋭芸術家の手掛ける彫刻の様に佇んでいた。手前には器に誂えられた匙が置かれている。本日の茶器は夜の王、紅茶は萬月を用意した。
「アクア、紅茶は好きかい？」
「あんま好きじゃねえ。」
少年はサバナクローの寮生の1人であった。それを見越して少年を先方は入学させたのであるから優秀には違いなかった。何かしら王政に対しての不満があり、瑕疵を握って来いと脅されたのだろうが、にしても詰まらぬ物である。対する彼は優雅に足を組み、少年を見詰めている。
「そうか。何なら飲む？」
「は？飲む訳無いだろ！」
まるで機嫌を損ねた乙女を窺いつつ窘める様な固い声音であった。対する少年は今から首を賭けられるのだろうと覚悟していただけに彼の和やかな提案に更に苛烈に反応した様だ。彼は香りを放つ芳醇な紅茶を楽しみつつチョコレートの唇に弧を描く。
「メル。ロゼを持って来てくれるかな。」
「畏まりました。」
彼はにこりと微笑んで鍵束を放り投げた。メルは難なく掴み、此方へ慇懃にお辞儀をする。最敬礼できっちり3秒間頭を下げるとすぐに踵を返す。氷の美貌が眼前を掠めた。彼は去ったメルを気にかける事もなく、呑気にパフェを食べ始める。
「イデアもパフェが食べたいのかい？」
「あ、いえ。拙者はA氏が少年を痛め付けるのかと思っておりましたぞ。」
「まさか。僕の腕は細いんだ。」
「それなら別の寮生を連れてくれば良かったのでは？」
「これは寮の問題じゃなくて生徒会の問題だよ。まあ、レオには報告済みだけど。」
「うーむ。拙者には分かりかねますぞ。」
花蜘蛛のパフェ/ Idia→←Secret Lilly / Leona
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鵯(ひよどり)(プロフ) - toraさん» 勤勉なる原書様、ご機嫌麗しく御座います。もう一つの方のコメントも大変有難うございます。お気に召していただき光栄に御座います。様々なカテゴリーを無造作に飛び回っていますので、いつかまた貴殿のお気に召す作品を認められたらと思います。 (2022年3月6日 2時) (
レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
tora(プロフ) - 何故、星に色がついていないのですか？？好き。貴方が書かれる文章とても好きです。 (2022年3月5日 23時) (レス) id: 57d5a3265f (このIDを非表示/違反報告)
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