潮風と百合 tkcn (ページ9)

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｢……なあ｣

『なに、ゆうや』

｢…いや、本当にそれ気に入ってんのか…？｣

俺からの質問にパッと振り返った彼は
言っている意味が分からないとでもいうように軽く小首をかしげる。

…いや、可愛いな、おい。

所々でする仕草や表情、

俺が出会ってきた中では群を抜いて可愛い。

うるうるで、まるで小動物のような黒い瞳に見つめられるんじゃ

そりゃ、言えねぇよな。

そんな天使のような彼が選ぶ服達が

“ダサい” なんて。

いや、だってさ
わざわざ車で少し遠い所まで来たんだよ。

周りにはかなり沢山の店もあるし、そんなに探そうとしなくたって、ちいに似合うような服なんてそこら中にある。

なのに……、なのにさ！

どうしてそんなにダサい服ばっかり選ぶんだよ！

白Ｔの真ん中に、某モンスターキャラクターの黄色いネズミが大々的にプリントされたTシャツを持ってきたかと思えば

それは、女物っていうようなロングスカートを持ってきたり…。

いつ被るんだよ、と思うような大きな黒ハットを被ってみたり。

季節感も違えば、何とも言いがたい奇抜な物、そもそも性別の違う服を持ってきたりと

まあ、かなりセンスというものが無いみたいだ。

おいおい、幸福研究なんちゃらセンターって一体何を教えこんでんだよ。

……とは言えず。

｢俺がちいに似合う服考えるから、ついてきて？｣

そんな言葉を彼に掛ければ、

『いいよ、選ばせてあげる』

なんて言葉が帰ってくるくらい、多分彼は自分のセンスのなさに気付いていない。

そして、きっとこれからも俺の遠回しは伝わらない。

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