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それからは無言で
家までの道をひたすら歩いた。
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時々視線がぶつかったけれど
どうもむず痒くて
すぐに下を向いた。
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那須と、那須雄登と
兄弟になるのか?
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色々な考えが
頭の中をぐるぐると駆け巡る。
ズキズキと痛むこめかみに
あ〜これは、
明日、体調崩しちゃうかもなあ、なんて。
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『....ついたよ。』
目の前にある
いつもよりも重いドアを開けて
柄にもなく ただいま と声をかける。
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那須雄登の父、即ち
あの人の男とは
初めて会うわけだし、
そういうの、あの人うるさいから。
無表情で下を見つめて歩いていた
先程とは対象に
優等生スマイルを貼り付ける私を見て
どうやら那須雄登は驚いたらしい。
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驚いていた割に、
出迎えたあの人に
こんにちは、那須雄登です。
いつも父がお世話になってます。
なんて しっかりと挨拶をする。
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那須雄登の父親は
思ったよりも
那須本人と顔自体は似ていなかった。
ただ、ピシッとアイロンのかかった
シャツや、相応の持ち物から
ああ、那須雄登の父親なんだと実感する。
Aさんは、お母さんに似ているんだね
と微塵も嬉しくない
褒め言葉に 適当に愛想笑いをかまして
リビングのテーブルにつく。
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たまに私に会う時よりも
めかしたあの人に
高校の同級生と
その父親、母親の恋人。
昔から仕事に男に忙しかった
母親と顔を合わせることなんて
3ヶ月に一回程度だったし
恋人なんて何ら珍しいことでもないし
生活費はしっかりと
振り込んでくれていたので
どうでもよかった。
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ただ、今回ばかりは
何か違う。
挨拶に来ることなんて
今まで無かったし。
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これから起こる
最悪の事態を想像すると
吐き気がする。
今更あの人と
一緒に生活なんてできない。
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なんとも気まずい雰囲気で
机を囲む4人。
最初に口を開いたのは
意外にも那須の父親だった。
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「いやぁ、まさかうちの雄登が
Aちゃんと同じ学校だったなんて。」
ねえ?なんてあの人に笑いかけると
あの人も女の顔して
ねえ?とニコニコする。
ああ、吐き気がする。
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作者名:ナミ | 作成日時:2018年6月15日 23時