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『どうして那須が
不機嫌そうな顔するの?』
「それ。」
『どれ?』
「那須って、言うの、辞めてよ。」
『那須くん?』
「雄登。」
『雄登?』
「悪くない。」
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思わずフッと吹き出すと
那須、じゃなくて雄登は
なんなんだよ、マジで。と
また不機嫌そうな顔をする。
難しい男だなあ。
まだ残る甘い香りに
涼くんなその点分かりやすくていいな
なんて。
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ベンチから立った雄登に
倣って私も立ち上がると
問いかけもなくまた手を繋がれる。
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涼くんの香水が
嫌なわけじゃないけど。
隣からふわっと香る
自分と同じ柔軟剤の香りと
繋がれた右手に
不思議とひどく安心した。
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「何?早く行くよ?」
『んふふ、なんでもな〜い。』
「気持ち悪。」
雄登ひどい〜と
茶化すように言うと
また耳を赤くして
やっぱ那須でいい なんて言うから
意地でも那須なんて呼んでやらない。
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昼間に誰かと
夜に体を繋ぐ以外で
出かけることなんてあっただろうか。
まあ、必要な物を買いに来ただけ
といえば そうなんだろうけど。
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いつも、手を繋ぐ家族や恋人たちを見て
誰かしらと手を繋ぎながらも
何か物足りないと思っていた心が
零れそうな暖かさで溢れるのは
雄登のおかげ、なのか。
多分、ちょっと前の私には
想像出来ない。
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作者名:ナミ | 作成日時:2018年6月15日 23時