Dendrobium (ページ24)

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『こりゃすごい。』

休日のショッピングモール
というものをなめていた。
どこを見ても人、人、人。

休日の昼間に外出なんて
久しぶりすぎる。
戸惑いを隠せないでいると
那須に手を繋がれる。

『....なす？』

「はぐれちゃ、ダメでしょ。」

耳を赤くする那須が
なんだか可愛くて
慣れてそうなのにねと
前を歩く那須に後ろから声をかける。

「.....っるせ。
慣れてんの？そっちは。」

『ああ、飛貴がひっつき虫だもん。』

飛貴の名前を出すと
那須は急に足を止めて振り返る。

「飛貴のこと、好きなの？」

『うん、好き。』

拗ねた子供みたいで。
ほら、今だってなんとも言えない顔して。
面白くって
つい、意地悪をしてしまう。

『お互い、いい関係としてね。』

あとから言葉を付け足せば
あっそなんて
また手を引いて前を歩き出す。

那須は、意外と子供っぽいんだなあ。
ちょっと、発見だ。

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「あれ？Aちゃんじゃない？」

少し人混みを抜けて
飲み物を買ってくると
那須はどこかへ行った。

さっきまで繋がっていたのに
離れた手を寂しく思っていると
聞き覚えのある声がする。

誰だったかな。
この男の子。
多分、1個上の人。

「Aちゃん。ひとり？
最近遊んでくんないね～。」

ふわっと香る香水に
茶色の髪の毛。

思い出した。
橋本涼。

『お久しぶりです。涼くん。』

そう言ってニッコリ微笑むと
今日も可愛いねと
頭を撫でられる。

この先輩、チャラついた
見かけによらず
優しいから好きだ。
行為中も同じで。

「また遊ぼうよ。」

『涼くんから誘ってくださいね？』

「ちゃんと来てくれるの？」

『予定が合えば。』

ほんと冷たいなあと
困った顔する涼くんを
甘ったるい女の声が呼ぶ。

涼くんは軽く私にハグをして
じゃあ、待たせてるから行くね。
と爽やかに去っていく。

まだ残る甘い香水の香りに
そういえば飛貴も
一時期香水つけてたなあ
なんて思い出していると
おでこに冷たいものが触れる。

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「ん、これ。」

『ありがとう。』

冷たい清涼飲料水を開けて
2人でベンチに腰掛ける。

「誰？今の。」

『涼くんのこと？
先輩よ。学校の。』

質問に答えたら
那須は不機嫌そうな顔をする。

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