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『.....そう....なんだ。』
那須の口から告げられた内容は
想像してたよりも重くて。
でも、私も知っている。
冷えてしまった心は
そう簡単に暖まらないと。
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「寝れなかったのにさ。
Aちゃんに抱きしめられただけで
ぐっすり眠れちゃうんだもん。」
ホント、びっくりだよね。
そう呟いた那須は
安心しきった子供のようで。
心がむず痒くなって。
『仕方ないから一緒に寝てあげる。』
なんて、可愛くない返事をした。
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朝、目が覚めると
那須はまだ眠っていて、
目の前にある顔に
やっぱり整っているなあなんて
そのへんの女の子みたいなことを
思ってみたりする。
「...んん、Aちゃん?」
寝顔見てたの〜?
ほんとやらしいね〜。
寝起きの癖して
一言余計な那須に
低血圧ながらも朝から腹が立つ。
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『ムカつく.....』
ベッドから抜け出そうとする
.....もそれは伸びてきた那須の
腕によって阻止された。
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『ちょっと、何?』
布団の中で
那須の両腕に包み込まれる形、
即ち背中から抱きしめられている。
「いいじゃん。浮所ともしてんでしょ。」
俺にだって、その顔見せてよ。
耳元で囁かれた甘ったるい言葉に
乗せられるほどウブじゃない。
『さすが、経験豊富ね。』
「まあね。割とおばさんは
こういうのでコロッと行くよ。
これでホテル代もタダ。」
『へ〜。』
「Aちゃんはお気に召さなかった?」
『残念だけど、
私はそんなに安くないわよ。』
売り言葉に買い言葉。
その体勢のまま軽く言い合いをする。
ふはっ と笑う那須は楽しそうで。
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那須が見た時は
たまたま、相手がおじさんだっただけで。
飛貴は知らないけど
飛貴以外にそういう相手だっているわけで。
ていうか、そのおじさんだって
道を聞かれたから案内しただけだ。
ふと、夜のことを考えてみると
改めて 最低な人間だと思う。
那須も私のこと言えないけど。
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今日は土曜日だ。
合鍵を作って、日用品を買う。
即ち那須と一日中一緒。
まあ、那須といるのは
学校にいるよりかは幾らかマシだ。
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顔を洗って歯を磨いて
昨日と同じようにリビングから聞こえてくる
生活音に、また少し暖かくなった気がした。
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作者名:ナミ | 作成日時:2018年6月15日 23時