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「ただいま〜〜おかえり〜〜」
ほら、Aちゃん
俺におかえりって言ってよ。
玄関に入るや否や
ぶっ飛んだ那須の思考に困惑する。
昨日からたったの一日だが
コイツは読めない上に
なかなかクレイジーな思考回路をしている。
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仕方なく
おかえり、ただいま
と小さな声で囁くと
よくできまちた〜なんて
また私を小馬鹿にして満足そうに笑う。
まあ、けど
誰かに言う
ただいま も おかえりは
悪くは無い。
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『じゃあ、いただき...ます?』
自分の料理を
誰かと一緒に食べるなんて
尚更初めての経験で。
「語尾にクエスチョンマークが見えるわ。」
『だって、初めてだし。』
「Aちゃんってさ、可愛いとこあるよね。」
じゃあ、いただきます。
としっかり両手を合わせて
適当に作ったワンプレート料理を
美味しそうに頬張る那須。
まあ、これも悪くは無い。
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『なんで那須はまた私のベッドにいるの?』
問題はこれだ。
風呂から上がって自室に入るも
当たり前のように人のベッドに
寝転がる那須。
なんなら寛いでやがる。
「だって俺、布団ないし。」
『いや、あの』
「ひとりじゃ寝れないし。」
ダメ?昨日はよかったのに?
急に可愛こぶって
目をキュルキュルさせて。
こいつは布団から出るという
気持ちが毛頭もなさそうだ。
渋々同じベッドに入り
2人で仰向けになる。
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そんなに大きいベッドでもないから
そこそこに狭い。
近いし。
昨日は疲れで気にならなかったけど。
吐息が聞こえるレベルだ。
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『ごめんね。今日は。』
先程のことを謝ると
那須は急に体の方向を変えて
私の方を向いて寝転ぶ形になった。
そして那須に肩を掴まれて
お互い向かい合う。
『ちょっと、那須?』
「俺はね〜1人じゃ寝れない。」
どう返すべきか悩んでいると
那須は続けて話し出す。
その目は微かに揺れていて。
ぶつかった視線を逸らしてしまうと
どこかへ消えてしまいそうに儚い。
「家族がおかしくなり始めてから、
寝れなくなった。俺、このまま
1人で死んじゃうんじゃねえかって。」
「人の温度がないと寝れなくなって。
毎日知らない女の人と。
Aちゃん見かけたのもその時。」
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作者名:ナミ | 作成日時:2018年6月15日 23時