Dendrobium (ページ3)

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頭がズキズキと痛む。
いつからだろうか。
母との会話に
頭痛や吐き気が伴うようになったのは。

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中学生になった時に
女の目をする母親を
受け入れられなかった。

きっと
同じ目を持っている自分も。

夜中にたまに男の人と帰ってきて
聞こえてくる生々しい声も。

その時あたりから
もう母親として見ることは辞めた。
お母さんだからとか
好きとか嫌いとか

もう。

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嫌いよりも怖いものは
無興味なのだ。
母親が私に向けている感情。
私があの人に向けている感情。

一致すれば
普通に生きられる。

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収まらない
吐き気と頭痛に唸らされながら
制服に着替えて準備をして

ついでに飛貴に
来て。と一言だけLINEをする。

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家を出る時間になり
重い玄関を開けると
家の前から飛貴が
ニコニコ手を振ってくる。

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「おはよ～A！！」

ヒラヒラと手を振りながら
ヘラヘラ笑う彼の名は浮所飛貴。
彼氏ではないけど慰めてくれる
そういう関係。

おはよと短い返事をすると
何も言わず肩を組まれ引き寄せられる。

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今日はいい天気だね～
なんて曇り空を見ながら呟く彼は

何も言わなくても分かってくれる。

彼氏でもないのにおかしいね
なんて、嫉妬した女の子達に言われるけれど
私の心を落ち着かせてくれる。
彼氏なんかよりも私には必要な存在。
なんだと思う。

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『今日は曇りだよ。飛貴。』

ルンルン気分な彼に
そう伝えると
彼はん？と私に首を傾げて
すぐにフッと微笑んでくる。

「オレにとって、
曇りはいい天気なんだよ。」

『曇り、好きなの？』

「いい天気なんて、
人の尺度によって変わるんだよ。」

イマイチ意味が理解出来ず
今度は私が首を傾げると
見兼ねたように飛貴が語り出す。

「例えばさ、Aの好きな花を
A以外の人も大好きだと思う？」

『思えない』

「人の言う幸せや当たり前が
Aの考えと一緒だ思う？」

『....思わない。全然。』

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そういうもんだよ。
だから俺にとって
曇りはいい天気なの。

と笑う彼は
私の家のことをよく知っていて。
知っているからこそ出た、
最後の喩えに
狡い男だなと思う。

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