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____起立、気をつけ、礼
やる気のない挨拶を終えて
さあ帰ろうと携帯を見ると
那須からメッセージが入っている。
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那須雄登一緒に帰ろ
なんで?
那須雄登鍵
ああ、合鍵、作らなければ。
那須にじゃあ校門で。
とだけ短く返事をして
飛貴に 今日は帰れない とメッセージを送る。
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珍しい。
飛貴が既読無視なんて。
まあ、いいか と
教科書をカバンに詰めて
クラスメイトに上っ面な挨拶をして
教室を後にする。
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アイツ、まだ来てないのか。
校門に寄りかかって
1人で那須を待つ。
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___アレ?Aさん、浮所は?
_______1人なの?俺、チャンス?
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こういうの、久しぶりだ。
いつも飛貴が待っててくれたから。
失ってから、大切なものに気づくって
こういうことなのか。
失ってはないけれど。
グイグイくる名前も知らない男子に
少し戸惑う。
終いには3人に囲まれる形になって
逃げ場がない。
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「Aちゃん。
待たせてごめん......って。何これ。」
______俺のなの。離して?
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敵わないと理解したのか
3人は那須の一言にサッサと退散していく。
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『ありがとう。那須。』
「ごめんね。先生に捕まっちゃって。」
バツが悪そうに頭を搔く那須に
なんだか申し訳なくなる。
『大丈夫よ。慣れてるし。』
「いつもなの?アレ。」
『いや.....いつもは、飛貴がいるから。』
浮所....ねぇ。
と苦い顔をする那須は
やっぱり読めない奴だ。
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『那須、合鍵作んなきゃね。』
「毎日一緒に帰れば問題なくない?」
『はぁ?』
冗談かと思って那須の顔を見ると
本人は至って真剣なようで、
『帰れない日もあるでしょ。』
「一緒に帰ってくれるんだ。」
まただ......
子供みたいに笑うから
どうしてか心が暖かくなる。
「じゃあ、明日。作りにいこ。
生活用品とかも欲しいし。」
『家に取りに行かないの?』
「それもそうか。行こう今から。」
悔しいことに
那須は1枚上手だ。
なんだか
那須のペースに巻き込まれてしまっている。
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作者名:ナミ | 作成日時:2018年6月15日 23時