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次の日の朝 ページ26

ピピピッという無機質な音が、だんだん大きく脳に響いていく



『…ん、あとちょっとだけ…。』



そう言って目覚まし時計に手を伸ばすけど


いつもの騒がしい声は飛んでこない


ひんやりと冷たい目覚まし時計に触れると


ぬるい液体が頬を伝った



『わかってる、わかってるよ。』



もう彼が見えないことなんて、でもきっと私が起きるまで隣で待ってくれてることなんて


こんなに弱い自分を見せたら隣で同じように悲しんでくれることなんて


全部わかってる



『おはよ。』



だから涙を拭いて、いつも通り微笑んだら


あなたもきっと笑ってくれるよね




藤「A…大丈夫か?」


大学に向かっていると、途中で後ろから歩いてきた流星に声をかけられた


『うん、平気。』



正直、全然大丈夫じゃないし平気でもない


でもこうしていないと何かが零れ落ちてしましそうで


下を向いたまま歩いていると、また上から声が降ってきた



藤「…ほんまに?…じゃあなんでいつもみたいに笑いかけてくれへんの?」


『…。』


藤「辛かったら頼ってええんよ。むしろ頼ってほしい。なぁ、A?」



そう言って、ポンと頭に置かれる彼の手


いつもより少し優しく私の髪をくしゃくしゃにさせるその手が、


昨日の彼の手の感触とどこか似ていて


それで心の中のストッパーが外れたみたい



『…うっ…ふ…ぁ。』


泣かないって決めたばっかりなのに


頬を伝う涙は止まることを知らなくて


彼は何も言わずに、ただただ優しく包み込んで私の頭を撫でてくれていた



『…またシゲのこと悲しませちゃうな…、それともアホやな〜って笑ってる?』


藤「…隣で笑っとるよ。Aの顔おもろいなぁ、元気出せって笑っとる。」


『うわ…最低。』


なんともシゲらしい。思わず笑みがこぼれると、


藤「ほら、今笑えたやろ?やって。凄いなぁ、シゲには敵わんわ。」


そう言って、彼は角ばった手で、私の涙をグイッと拭った


藤「よし、行こか。外寒いし、暖房が恋しいな。」


寒いから手ぇ繋いどこ。と私の手を取って歩いていく







「2人とも、元気でな。」








彼の声が聞こえた気がした


冷たい風が髪をなびかせる冬の日だった

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shihok0712(プロフ) - 気が付いたら涙がら流れてました。目に見えて、普通に会話し合える背後霊なら、一緒に居て楽しいやろなぁ。唯一亡くなる前に通り魔から庇うしげちゃん、男気半端ないですね! (8月20日 20時) (レス) @page37 id: ebf12df227 (このIDを非表示/違反報告)
千歳あめ - はじめまして!この作品読んでボロ泣きしました。いい話過ぎます……! (2023年3月26日 22時) (レス) @page35 id: a0f783b703 (このIDを非表示/違反報告)
ふーか。(プロフ) - とても面白かったので続編待ってます!勉強も更新も頑張ってください。 (2019年12月8日 6時) (レス) id: 2aef7cd3bd (このIDを非表示/違反報告)
おず(プロフ) - 続き、嬉しいです待ってました!楽しみにしてますね (2019年11月9日 15時) (レス) id: bc6c17b8f8 (このIDを非表示/違反報告)
bbjaniyokoyuzu(プロフ) - 涙止まりませんでした!!!続きお待ちしてます!!!!!!! (2019年5月7日 20時) (レス) id: c52be9df5c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚菜 | 作成日時:2018年1月22日 20時

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