お前が ページ31
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「 ...言えない!!言えない言えない言えない!!! 」
骨の奥まで震えるような恐怖の匂い。その鬼はひたすら首を横に振った。
その様子に只事ではないと察する。
「 言えないんだよオオオ!! 」
そう言いながら両腕を再生させた鬼は、私の首めがけて襲ってくる。急なことに驚きながらそれを躱すと私は鬼の首を斬った。
__ああ、まだ何も聞き出せなかった。
不甲斐なさにギリ、と歯をくいしばる。そしてぐったりと塀に寄りかかって座る禰豆子に私は駆け寄った。
...寝てる。血も止まっているし、回復するための眠りだ。
私は眠る禰豆子にそっと触れる。こつん、と額同士をくっつけて私の妹は生きていると安心した。
ごめんね、ごめん。もう少し待ってて、お姉ちゃんがきっと人間に戻してみせるから。
禰豆子の頬を優しく撫でる。少しだけ禰豆子が笑った気がした。
禰豆子を箱の中に入れると放心状態の和己さんの元へ行った。目線を合わせるように座り込むと彼に声をかける。
「 和巳さん、大丈夫ですか? 」
「 ......婚約者を失って、大丈夫だと思うか 」
そう言う和巳さんの顔は絶望しきって、何の希望も感じられないといったような表情。
...痛いほど、わかる。死んでしまった大切な人はもう二度と私たちに笑いかけてはくれない、体温を伝え合うこともできない。
「 和巳さん。
失っても失っても、生きていくしかないです。どんなに、打ちのめされようと 」
そういった私の羽織をぐっと掴むと彼は大声で怒鳴った。
「 お前に何がわかるんだ!!お前みたいな、子供に!! 」
ぼろぼろと涙をこぼしながら、行き場のない怒りと悲しみがそこにある。
そんな和巳さんを私は少し見てから__ふわりと困ったように笑った。
ゆっくりと羽織を掴む和巳さんの手をとる。
「 私は、もう行きます。これを 」
私がそう言って和巳さんに差し出したのはあの鬼が持っていた女の子たちのかんざし。
せめて、遺体がない分形見だけでもあったらいいかと思ってとっておいた。
「 この中に、里子さんの持ち物があるといいのですが... 」
それを驚いたように受け取る和巳さんに私はぺこりとお辞儀をする。さようなら、頑張ってください。そんな意味を込めて。
背を向けて歩き出した私を和巳さんが呼び止める。
「 すまない、酷いことを言った!!どうか許してくれ!! 」
そう叫ぶ和巳さんに、私は手を振ると町を出たのだった。
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作者名:あるみかん | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=48be83eaada675e79ed496ea5cdf8f4f...
作成日時:2019年8月8日 19時