緑くんの心配 ページ10
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放課後の部活、ドラムの調整しとったら、A姉ちゃんが男の人連れて入ってきた。
｢A姉ちゃん！｣
嬉しくて思わず声が弾んでしまったんやけど、一緒にいたのが男の人で落胆する。
｢忠義ー！部活どうなん？
楽しい？｣
｢おん。ここやと思いっきりドラム叩けるからな。｣
｢せやんなー楽しそうでよかった。
あ、この子な渋谷すばる！
私のクラスに転校してきたんやけど、
歌めっちゃ上手いねんで！｣
渋谷先輩は小さく会釈すると、すぐに近くの椅子に座ってスマホいじっとった。
なんや怖そうな人やな。
｢なぁなぁ、さっき言うてた姉ちゃんやんな？｣
錦戸が俺んとこ来てコソコソ耳打ちしてきよった。
なんやその声が嬉しそうに弾んでて、それがさらに俺の機嫌を悪うさせた。
｢大倉のお姉さんっすか？
俺、1年の錦戸亮いいます。｣
｢錦戸くん。
忠義と仲良うしてやってな、この子な優しいんやけどちょっと危なっかしいとこあんねん。｣
｢ちょ！姉ちゃん！｣
A姉ちゃんは笑っとった。
そしたらまだギターのことは気づいとらんのかな、って安心しとったんやけどな。
｢そう言えば、錦戸くんはギターなんやね。
そのギター、どこで買うたん？｣
ってA姉ちゃんが錦戸に質問したから、あーやっぱり気づいとったかって、俺は少しピリついた空気にヒヤッとした。
錦戸も眉をひそめて不思議そうな顔しとる。
｢これ、駅前の楽器屋さんで中古で買うたんすよ！
あの、さっき大倉もこのギター見てなんや言うてましたけど、A先輩も知ってはるんですか？！｣
あかん。さっき言わなきゃよかった。
A姉ちゃんの表情は固まったまま、返事に困っとった。
さらに嫌な空気がその場に流れる。
ガラガラッ
｢はぁーっ！
遅なりましたぁ！
まったく困ったわー先生話長すぎやもん｣
助かった。
丸が入ってきてくれたおかげで話が途切れた。
さっきまでの空気なんかなんも知らん丸はA姉ちゃん見つけてめっちゃ嬉しそうや。
｢あ、Aちゃんやーん！
やっとここで会えたなぁ｣
｢…あ、丸ちゃん、どうや？
部活頑張っとる？｣
A姉ちゃんも丸に話しかけられて正気取り戻したようやわ、安心した。
答えを聞きそびれた錦戸だけが怪訝そうな顔しとったけど、すぐに顧問の信ちゃんが入ってきて練習が始まった。
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作者名：神八爽蘭
| 作成日時：2020年2月28日 18時
