天使ちゃんの秘密1 ページ9
.
｢はいはい、行くでー！｣
だるそうに歩くすばるの手を引いて颯爽と歩く。
すれ違う女子がコソコソ話してるけどそんなの気にせえへん。
こんなんは今に始まったことやない。
男の子が欲しかったお母さんは、小さい頃私を男の子のように育てた。
再婚して弟が出来てからはそれを強要することはなくなったけど、私はそれが楽やったからそっちを選んだ。
それに忠義や信ちゃんや隆平
私の周りには男の子ばかりやったから自然と自分もそのまま男の子みたいに振舞ってた。
せやからままごとよりかけっこや戦いごっこ。
男の子とのハグなんかも仲良しの証。
まぁ基本的に人との距離が近いとは言われるけど…
ずっとこうやっていられる思ってた。
性別なんて関係ないって思ってた。
せやけど成長すればするほど男と女の違いは明確になっていく。
私はそれが辛かった。
中学生の制服がスカートなことも、胸が膨らんできたことも、生理が始まったことも
どれも女にしかないことで、やっぱり自分は女なんだと、3人とは違うんだと実感せざるを得なかった。
せやからやけになった私は、自分の心に蓋をしてあえて女であることを武器にした。
この頃から度々告白されるようなった。
同級生、先輩、あるいは他校の人。
男性に対してそんな気持ちになれへんでどれも断り続けたけどな。
ある日、厄介な人に好かれてもうた。
相手は3つ年上の高校生やったんやけど、彼女がおったらしく、その彼女が学校に乗り込んで来よった。
男は私が言いよった人みたいに言うし、彼女は怒鳴り散らすしその場は騒然としていた。
その人言ってはったわ。
｢こんな男みたいな女のどこがええの？｣
って。
いつしかその噂は広まり、私の事気に入らん女子達が｢Aちゃんはビッチ｣なんて陰でコソコソ話するようなった。
私は女子のそういうねちっこいの大嫌いやから気にせんふりしとる。
もう慣れっこや。
｢さー着いた！入るで！｣
ガラガラっとドアを開けて入る。
｢失礼しまーす！
ボーカル連れてきたでー！｣
｢ちょ！お前！まだ入るいうてないやんけ！｣
中にはドラムの調整をしている忠義とギターを持った男の子がいた。
その子の持ってるギター見て一瞬胸がズキンってなった。
よく覚えてるギター。
忘れもせぇへん。
忘れたくても忘れられへんって方が正しいかな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 91人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：神八爽蘭
| 作成日時：2020年2月28日 18時
