天使の誘惑(∞) (ページ20)

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赤くんの混乱した気持ちページ20

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俺はAが口を開くまで待った。

｢あんな、大切な人の思いにどうしても応えられへんねん。
今のまんまの関係を続けるにはどうしたらいい？｣

｢は？｣

俺は思わず飛び起きた。

Aは膝に顔をつけたままこっち見いひん。

なんて返したらええかわからへん。

こいつ、誰かに告られたんか？

あ、もしかして最近Aの周りちょろちょろしとる錦戸か？

せやけど大切な人言うてたしな、

いつもの二人の様子からしてAにとっての大切な人とは思えへん。

混乱した頭で考えを巡らす。

てか俺なんでこんな動揺してんねん。

｢でもお前それはちゃんと思いには答えられへんっていうのを形として見せなあかんのちゃう？｣

絞り出した答えはこんな抽象的なのしか出えへんくて、この時ほど頭がもっとよかったらって思ったことはないわ。

｢ちゃんとって？｣

｢…ちゃんと言うとか…？
でもその様子やと言われへんのやろ？
せやったら…他に相手見つけるか…｣

こんなん言うたのはその相手が俺にならないか期待したっていうのもある。

Aが真剣に悩んどるのに酷いやつやな、俺。

｢やっぱりそうやんなぁ…
傷つけた無いけどそれが1番手っ取り早いよな…｣

Aはしばらく考えてブツブツ言っとる。

それからゆっくりと顔を上げた。

｢ありがとうすばる！
少しスッキリした！｣

振り返って見せたAの笑顔はなんとも言えんかった。

こいつの複雑な感情を全部わかってやることは出来ひん。

でも、少しだけでも俺に寄りかかってええんやで。

情けない俺はそんなん口にすることなんて到底できひんかった。

授業が終わるチャイムが鳴る。

俺たちは屋上を出た。