紫先生のお友達 ページ12
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｢まさか信五くんがこの学校の先生なるなんて思いませんでしたよ｣
放課後の職員室、生徒会室の鍵を返しに来たヨコが俺んとこに来た。
遅い時間やったんでほとんどの先生が帰った職員室はしーんと静まり返っとった。
ヨコは昔よう遊んどった仲間の従兄弟で何回か遊んだことがある。
一番最初に会った時はあんなにちっちゃかったのに今じゃ生徒会長やっとるなんてな。
俺も年取るわけやわ。
ヨコがおるのは知っとった。
なんせ学校の生徒会長やしな、おまけに軽音部も兼部やけど所属してる。
せやけど赴任してからなんやかんやバタバタで昔の知り合いとゆっくり顔合わせる暇なんぞ、新任教師にはこれっぽっちもなかった。
久しぶりの会話に嬉しなったのもあって、少し話そうって言って、
ほんまは生徒入れたらあかんのやけど、誰もいないのをいいことに俺たちは喫煙スペースに移動した。
最近じゃ学校も喫煙者に偉い厳しくなって、ここでしか吸えへんねん。
俺が学生の頃は職員室でバンバン吸っとったけどな。
すまんな、と断りを入れてからタバコをくわえる。
｢ヨコ、久しぶりやな。
軽音部の件、手貸してくれたんやろ？｣
｢聞きました？
Aにしつこく頼まれましてね｣
｢Aは、たつのことになると周り見えへんようなるからな。
ところで、あいつからその後連絡は？｣
｢いいえ。
その様子だと信五くんにも連絡いってないみたいですね。
もうあれから随分経つんやけどな。｣
｢せやな。
Aも何も言わへんけど、ずっと待ってるはずやねん。｣
Aの待ってる人、それはどんなにおれらが足掻いても決して越えられる存在やない。
ヨコは何も言わへんかった。
何か考えてるようやったけど、結局それを聞くことは出来ひんまま。
｢じゃあ、そろそろ帰ります。
また。｣
軽く会釈して職員室を出ていくヨコの後ろ姿にそいつを少し重ねてしまった。
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作者名：神八爽蘭
| 作成日時：2020年2月28日 18時
