赤くんは困惑 ページ11
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Aに連れられて軽音部の見学に行った。
部室もめっちゃ奥にあるし、部員もほとんど1年やん。
3年の先輩もおるみたいやけど、剣道部と兼部らしいし、
ほんまに部活として成りとってるんか…？
って思ってたら
｢一応私も、軽音部やねん。
名前だけ｣
Aが白状しよった。
ドラムいじっとったのがAの弟やな。
A来た瞬間、
｢A姉ちゃん！｣なんて甘えた声出しよって、
完全にシスコンやなこいつ。
にしてもAとは全然似てへん。
姉弟って言われなわからんくらいや。
そう言えばギターのこと、錦戸ってやつに聞いてた言うことは、Aもギターやるんかな？
いくら弟のためとはいえ、自分も音楽に興味なかったらここまでせえへんやろ。
って言うか、そもそも弟の部活の勧誘なんて普通はせえへんわな。
あの姉弟にはなんかある。
ますますAに興味が湧いた。
部活の見学は30分くらいで切り上げてきた。
ずっとおってもなんか気まずいしな。
帰る言うたら着いてきたA。
｢弟、ええんか？｣
｢うん。練習楽しそうで安心した。｣
｢てかお前も練習せなあかんのちゃうか？｣
｢あ、ええのええの。
私はほんまに名前だけの部員やから｣
聞けば、軽音部はAが1年の頃は3年の先輩が何人もおったんやって。
けどその先輩が卒業して、Aの同級生も辞めてもうて部員は1人。
部活として存続危機。
それをAが何とかしたくて生徒会長に掛け合って今に至るとか。
｢お前、名前だけ言ってるのになんでそこまでするん？｣
｢弟が、忠義がね。
ドラム大好きやから｣
｢弟のためってことか？｣
｢うん。
忠義にはドラムの才能がある。
せやからドラムを思いっきりできる環境を作ってあげたかったんよ。
ドラムって場所とるやない？｣
｢せやけどどうしてそこまで…｣
｢私、忠義からお母さん奪っちゃったから。｣
｢え。｣
｢うち、再婚なんやわ。連れ子同士。
私のお母さんと忠義のお父さんが再婚したってわけ。
うちは死別やけど忠義はちゃう。｣
｢そうなんか。｣
｢せやから忠義のためならなんでもしてあげたいんやわ。｣
｢これ内緒な｣って人差し指立てて笑うA。
俺はなんて返したらええかわからへんかった。
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作者名：神八爽蘭
| 作成日時：2020年2月28日 18時
