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あっという間に約束の金曜日がやってきた。
その間も深澤くんの部屋には数人の女の子が来ているようだったけど、今日のことを考えれば全然気にならなかった。
だってその子たちの行ってない特別な場所に連れて行ってもらえるんだもん。
意外にもお店はアパートからそんなに遠くなくて、徒歩圏内だったので二人で歩いてお店に向かった。
「いらっしゃい。
ふっか、奥の部屋ね。」
「おう、ありがと。」
こんなところあったんだ。
少し路地を入ったその先にお洒落な外観のお店があった。
中に入ると出迎えてくれた店員さんと親しげに話す深澤くん。
皆から"ふっか"って呼ばれてるんだよね。
この前の女の人もそう呼んでた。
小さな個室に通され、深澤くんと向かい合って座る。
こういう風に深澤くんを見ることはあまりないのでそれだけでドキドキしてしまう。
「Aちゃんは、なんにする？」
「私はカシオレで。」
「かあいいの飲むね。」
そう言って深澤くんはさらっと店員さんに注文を済ませる。
さすが、慣れてるなって思った。
「Aちゃんとこうやって会うの何気に初めてだよね？」
「そうだね。」
「なんか変な感じ。
もう１年以上経つのにな。」
深澤くんも同じこと思ってたんだ。
そうだよね。私たちが会うのは大抵あのベランダで、勇気を出してこの前誘った夕飯もさらりと断られてしまった。
お隣さんだからそれが当たり前なんだけど。
「あ、そういえばAちゃんに聞きたいことあったんだよね。」
「何？」
深澤くんは徐にポケットからスマホを取り出した。
それをテーブルの上に置くと私を見つめる。
「Aちゃんの連絡先知りたいんだけど、いい？」
「そっか。知らなかったね。」
一年以上隣で過ごしているのに自分でも忘れてしまうほど、必要性がなかった。
私もバッグからスマホを出して、ＱＲコードを利用して連絡先を交換する。
私のスマホに深澤くんの連絡先が入ったなんて、なんだか不思議な気分だった。
ちょうどいいタイミングでやってきたお酒で乾杯をする。
一口飲んだカシオレは今まで飲んだどんなものより甘くておいしい気がした。
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作者名：カフ
| 作成日時：2022年10月11日 21時
