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「持つよ」
後ろからさらっと私の買い物袋を誰かが奪った。
そんなことするのは一人しかいない。
優しいその声に振り向くと、深澤くんと目が合った。
「ありがとう」
「ううん。ちょうど俺も帰るとこだから。」
しばらくして信号が青に変わり、私たちは並んで歩き出した。
あの日以来、私と深澤くんの関係は少しだけ変わってしまったみたいだ。
深澤くんはその変化に気づいているかわからないけど、なんとなくお互いが探り探りな気がする。
彼の気持ちを知った今、距離を詰めていいのか、それとも距離を取るべきなのかわからないでいた。
深「弟くんさ…」
「うん？」
深「ハーフだよね？」
「あ、今全然似てないって思ったでしょ？」
深「正直思った。」
「だよね。私たち、血繋がってないの。」
深「え？」
「私の母とラウのパパが再婚して私たちは姉弟になったんだ。」
深「そうだったんだ。」
深澤くんは複雑な表情を浮かべた。
こんな話聞いたら反応に困るよね。
できるだけゆっくり歩きながら私は努めて明るく答えた。
「ラウは私のこと慕ってくれてるし、パパもとってもいい人なの。
皆すごく仲いいの。」
深「そっか。よかった。
俺も妹がいるんだけど、今は買ってほしいものねだられるくらいで普段は全然だよ。」
「お兄ちゃんのこと頼りにしてるんだ。」
深「そういう風に言われると悪くないな。」
「ふふ、単純。」
さっきまであんなに急いでいたのに、今は出来たらまだアパートに着かないでほしい。
そんな風に思わせてしまう彼はすごいし、ずるい人。
時間が止まってくれればいいなんて思うのに当然止まるわけなくて、あっという間にアパートに着いてしまった。
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作者名：カフ
| 作成日時：2022年10月11日 21時
