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深「その人とは一番最初に就職した会社で知り合った。
俺の直属の上司だった人。
仕事はめっちゃできるし、いつも明るくて周りに気遣いが出来る人だった。
人としても尊敬してた。
でもその人、俺が好きだって思った時にはもう同じ会社の部長と婚約してた。」
「えっ」
深「何度も諦めようとしたけどできなかった。
だからずるいと思ったけど、気持ちを伝えたんだ。
そしたら「もっと早く言ってほしかった」ってさ。
俺ら両想いだったわけ。」
「それで、その人は婚約解消したの?」
深「ううん。予定通り結婚したよ。
でも結婚して3か月くらいしたときかな、二人で出張に行った時にそういう関係になってそれから社外でも誰にも内緒で会うようになったの。」
「それは不倫ってこと?」
深「まぁそうなるよね。
あの時の俺は馬鹿みたいに一途だったからさ、彼女が会いたいって言えばすぐに会いに行ったし、彼女にお願いされればできる限り望みを叶えてた。
でも、ある日彼女が退職するって話が出て、理由は妊娠。
それで俺はあっさり捨てられたって話。」
「…」
深「恋愛感情を持った相手としてさよならも言わせてもらえなかった。
幸せそうな顔して「お世話になりました」ってだけ。」
「ひどい。」
深「俺がいけなかったんだ。
既婚者に手出したらどうなるかくらいわかってたのに。
自分の気持ち抑えられなかった。」
「でも深澤くんは本気で好きだったんでしょう?」
深「うん…好き。
今も好き。
だからそれからは自分のことどうでも良くなっちゃって、言い寄ってきた子で適当に隙間埋めてるって感じかな。」
「深澤くん…」
深「最低だよね。
軽蔑したでしょ?」
深澤くんは悲しそうに、自嘲的に笑った。
無理して笑ってるんだってすぐにわかった。
この人はこうやっていつもバリアを張って自分を守ってたんだ。
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作者名:カフ | 作成日時:2022年10月11日 21時