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｢そろそろ引き継ぎとか落ち着いて余裕できると思うからまた家来るな？｣
｢うん。今日はありがとう。｣
｢こちらこそやで？
おかげでいいもん買えたわ。
A…｣
｢ん？｣
｢俺がおるから。
なんかあったらいつでも言ってくるんやで？｣
｢わかった。｣
帰り際に康ちゃんはそう言って私の頭を撫でた。
その大きな手に本当に甘えてしまいそうだった。
今日深澤くんと会ってる子は、私なんかよりずっと若くて遠くから見ても分かるくらいスタイルのいい子だった。
1人になった瞬間にそんなことばかり考えてしまって、しばらくドアを開けたまま康ちゃんの背中を見つめて居るとその姿が消えた時にちょうど隣のドアが開いた。
深｢あ、Aちゃん。｣
｢深澤くん…こんばんは。｣
｢出かけるとこ？｣
｢ううん。
さっきまで康二来ててね、お見送り。｣
｢そうなんだ。
俺もさっき1人になったとこ。｣
｢知ってる。さっき見た。
あんな若くて可愛い子、こんなに早い時間に帰すなんて珍しくない？｣
｢んーなんでだろーな…｣
深澤くんは困ったように眉を下げて笑った。
それは何かを誤魔化しているみたいだった。
私はどうしたらいいか分からなくて、床に視線を落とす。
せめてもの思いで必死に口角を上げた。
しばらくの沈黙のあと、ザッと少しだけ音がして、サンダルを履いた深澤くんが1歩足を進めたのがわかった。
｢Aちゃん…｣
｢あ、お湯沸かしてるんだった。
そろそろ戻らなきゃ。またね！｣
結局、深澤くんの顔を見ずに部屋に戻ってしまった。
お湯を沸かしてるなんて嘘。
大体ケトルだし、沸けば自然とスイッチきれるし…
だから本当は、別に戻らなきゃいけない理由なんてない。
ただ様子がいつもと違う深澤くんの言いかけていることを聞くのが怖くて逃げた。
それだけ。
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作者名：カフ
| 作成日時：2022年10月11日 21時
