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｢夕飯どうする？｣
｢じゃあ、家来る？
何か作るよ｣
｢行く行く！
この前のハンバーグほんま美味しかったもんな。
楽しみや。｣
康ちゃんは嬉しそうに車を走らせた。
途中でスーパーに寄って食べたいものに合わせて食材を選ぶ。
今日は康ちゃんからのリクエストでオムライスになった。
簡単だしすぐにできるからありがたい。
アパートの前に車を停めて降りようとした時、康ちゃんが何かを見て私に尋ねてきた。
｢あれ？ふっかさんやない？｣
康ちゃんのし線を辿っていくと確かにアパートの入口に深澤くんが立っていた。
これから部屋に戻るようで階段を上がっていく。
初めて見るポニーテールの若めの女の子と一緒に。
｢女の人と一緒やん。
なんや〜ふっかさん彼女おったんか。｣
分かりやすくほっとしたように車のシートに凭れる康ちゃん。
言うべきか言わないようにするべきか悩む前に私はもうその言葉を発していた。
｢彼女じゃない、たぶん。｣
｢え？｣
｢ほら、深澤くんってモテるからさ…｣
一瞬重くなってしまった空気を変えたくて明るく取り繕ってみても、康ちゃんの表情は険しいままだった。
そんな態度が逆に私の気持ちが深澤くんへ向いているんだと察したのか康ちゃんは視線を変えないまま言った。
｢A…、もしお前がそういうんやったら言っとく。
ちゃうかったら聞き流してな？
ふっかさんはやめとけ。｣
｢は？｣
｢誰でもええってことはAじゃなくてもええってことやろ？
そんなんAが傷つくだけやん。
俺そんなA見たないわ。｣
｢何言ってんの。
私はとっくにそういうの、対象外だから。｣
自分で言ってて悲しくなる。
康ちゃんのいう"誰でもいい"にすら入れない私。
それでも好きなの。
重い空気がしんどくて笑って誤魔化したら今度は康ちゃんもそれに乗ってくれて、それから深澤くんの話をすることはなかった。
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作者名：カフ
| 作成日時：2022年10月11日 21時
