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｢やっと休みやぁ〜、A買い物付き合ってや？｣
康ちゃんからそんな電話が来たのは金曜日のことだった。
どうやら新しい職場でだいぶ期待されているらしく、毎日大変だと愚痴りながらも充実している様子がその口調で読み取れた。
幸い明日は何も予定がなく、家でのんびりする予定だったのでちょうどいい。
私は喜んで康ちゃんからの誘いを快諾した。
翌朝律儀にアパートまで迎えに来た康ちゃんは、今日のためにレンタカーを借りたらしい。
アパートの前に停まっているのを見て、そういえば康ちゃんの運転する車に乗るの初めてかも、楽しみ。なんて思っていた。
｢そういえばふっかさん、元気？｣
｢うん。
あ、この前また呑もうって言ってたよ。｣
｢あん時俺寝ちゃったからな。
今度はもっとペース考えて呑むわ。｣
｢そうだね。｣
｢あれからも結構ふっかさんと話すん？｣
｢うん…まぁ、たまにね？｣
｢ええなぁ、羨ましい。｣
｢深澤くん面白いもんね。｣
｢そうやなくて、Aといっぱい一緒におれるんが羨ましい。｣
｢え？｣
｢俺もAのアパートに引っ越そうかな？
逆隣って空いてへんの？｣
｢引っ越したばっかでしょ？
それに逆隣はもう住んでる人いるから。｣
｢なんや…残念。｣
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冗談なのか本気なのか分からないことを平気で言う康ちゃんはお洒落な雑貨屋さんでマグカップを手に取った。
鮮やかなオレンジ色のマグカップ。
｢Aは何色がええ？｣
なんて聞かれて私はその隣の淡いパープルのマグカップを指さした。
それを見てオレンジとパープルのマグカップを買い物かごに入れる康ちゃん。
｢なんで両方買うの？｣
｢これはAが俺ん家来たとき用。｣
｢わざわざいいよ〜｣
｢俺が買うんやからええの。｣
｢ありがとう。
じゃあいっぱい家に行くね。｣
｢ほんまそういうとこ、かわええな。｣
康ちゃんは昔から私のことをたくさん褒めてくれる。
優しいんだ。
深澤くんとはまた違う優しさ。
康ちゃんになら恥ずかしがることも、照れることも無く素直にありがとうって言えるのに。
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作者名：カフ
| 作成日時：2022年10月11日 21時
