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「やっぱり俺の思ってた通り、Aちゃん料理上手だね」
「ありがとう」
「昔は包丁すらビビって握られへんかったのにな。
いつの間にこんなん作れるようになったん?」
「もう、子供の頃の話でしょ?」
「そうなんだ。意外!
Aちゃんいつも自炊してるイメージだもん。」
「一人暮らし始めてからはするようにしてるの。」
康ちゃんが話す私との思い出話を優しい笑顔で聞いている深澤くん。
ちょっと恥ずかしいけどすごく楽しくて、やっぱり人と食べるご飯っていいなって思った。
そんなこんなで食べ終わったのだけど2人のウマが合ったのか、話が予想外に盛り上がってまだまだ飲もうって話になった。
とりあえず食器を片付ける間、2人に飲んでてもらおう。
蛇口を捻って水道をだす。
しばらくの間はその音に負けないくらいに笑い声が聞こえたのだけど、急に静かになった。
不思議に思って振り向くと深澤くんがすぐ後ろに立っている。
びっくりして思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
「ごめん。
驚かせるつもりはなかったんだけど…」
「大丈夫。私こそ大きい声出してごめん。」
「康二寝ちゃったよ。
俺も手伝う。」
「いいのに…」
「俺が手伝いたいの。ダメ?」
「ううん。ありがとう。
じゃあお皿拭いてもらえる?」
「りょーかい!」
深澤くんと2人で並んでキッチンに立つ日が来るなんて思いもしなかった。
時々腕が触れて、途端に心拍数が上がって、その部分だけ熱を持ったみたいな感覚に陥る。
私を見つめるその目も、私の名前を呼ぶ声も、思わず触れてしまった腕も全部私をドキドキさせるには、容易い。
ごめんね康ちゃん…
もう少し眠っていて?
「ハンバーグ、ほんとにおいしかった。」
「よかった。」
「また食べたいなぁ」
「私ので良ければいつでも。」
「ん。他のも食べてみたい。いい?」
「もちろん。
じゃあ食べたいもの教えてね?」
「考えとく。」
次があるんだって思うと嬉しくて、ニヤついてしまうのを隠すので必死。
バレてないといいな。
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作者名:カフ | 作成日時:2022年10月11日 21時