隣の甘い誘惑（紫） (ページ2)

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私がこのアパートに引っ越してきたのは、１年半くらい前、深澤くんの第一印象はかっこよくて優しそうなお兄さん。

引っ越しの挨拶に行った時寝起きだったのか、ふにゃっと柔らかい表情でお菓子を受け取った彼に私は胸を打たれた。

だけどすぐに奥の方から彼を呼ぶ可愛らしい声が聞こえてきて、出会ったと同時に私は失恋をしたような気持ちになった。

チラッと見えた女の人は私とは違って黒髪ロングの綺麗な人だった。

恋人がいるんだ…そう思って芽生え始めた気持ちに蓋をしようとしたのだけど…

一目惚れって言えば大袈裟になるけど、

この気持ちをなかったことにしようと思えば思うほど、彼のことを考えてしまう自分がいた。

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それから数日後、買い物に行こうと家のドアを開けた時、隣のドアが開いた。

挨拶しなきゃとドキドキする胸を抑えて彼の方を見ると、隣にはこの前とはまた違う女性が立っていて、彼の腕にぎゅっと抱きついていた。

「あーどうも。
おでかけ？」

「…はい。
深澤さんも？」

「ん、これからちょっとね。
てか深澤さんとか硬いのやめてよ。
せっかく隣に住んでるんだし、仲良くしよ？」

優しい笑みを浮かべる彼の横で、誰この女？と言わんばかりに睨みをきかせる女性の視線にいたたまれなくなった私は逃げるようにその場を後にした。

そういう人なんだって思った。

私の周りには居ないけど、よくドラマとかで見る。

特定の相手を作らない人。

かっこいいし、そりゃモテるよね。

今度はショックを受けるよりもなんだかほっとした気がした。

彼がそういう人なら逆にこれで気軽に接することが出来る。

さすがに女性と一緒にいる時は無理だけど、お隣さんとして、彼の言う通り仲良くは出来るんじゃないかなって…

自分なりに気持ちに折り合いをつけて、答えを見つけたつもりだった。