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オフィスに戻った時、一番最初に目がいったのは深澤さんのデスク。
ほぼほぼ残業していく深澤さんの姿が今日は見えない。
辺りをキョロキョロしていると、深澤さんの向かいのデスクの翔太と目が合った。
彼は少し目を細め、持っていた数枚の資料を私に向かってヒラヒラさせてみせた。
おそらくプロジェクトの改善点の書かれた用紙だ。
「ねぇ、深澤さんは?」
「深澤さんならさっき帰ったけど…
それよりこれ!早くやるぞ!」
「うん。」
「目黒もこれ、よく確認しとけ。」
翔太は立ち上がって私の後ろにいる目黒くんに資料を手渡した。
自分のデスクに戻る時に近くで顔を見られて、しまったと慌てて顔を逸らす。
泣いたまま何もしてない。
「A、なんかあった?」
「…別に、何もっ。
早く終わらせちゃお!」
心配する翔太の横をすり抜けて足早に自分のデスクに戻った。
それから2時間後、だいぶ詰め込んだな、とはぁと息を吐いた。
そんな時デスク置かれたコーヒー。
美味しそうな湯気が立っている。
「少し休憩しろ」
翔太がぽんぽんと優しく肩を叩いた。
「…ありがと」
「目黒は帰らせたから。」
いつの間にか隣のデスクに目黒くんの姿は無かった。
集中してたから気づかなかったのか、それとも目黒くんが気を使って声をかけなかったのか…
オフィスには翔太と2人きり。
昨日の出来事が急にフラッシュバックして、どうしたらいいのかわからなくなる。
物音しないオフィスは怖いくらい静かで呼吸を忘れてしまいそう。
「…好きなんだろ?」
そんな沈黙を破って翔太が呟いた。
「え?」
「やっぱり深澤さんのこと、好きなんだろ?」
今日のお前、深澤さんのことばっかり見てた。
って言いながら翔太は窓の外を見つめた。
翔太からも分かるくらい、今日1日私は深澤さんのこと気にしてた。
翔太にもちゃんと言わなきゃ。
「さっき目黒くんにちゃんと断ってきた。」
「うん。」
「翔太のおかげ。」
「うん。」
「だからごめんなさい。
翔太の気持ちにも応えられない。」
「うん。」
翔太はコーヒーを飲んだ。
カップの湯気がふわりと消えていく。
「でも、お前の気持ちがまたふらついたら今度こそ俺が…」
「何?」
「やっぱいい。
じゃあ俺もそろそろ帰るから。」
飲み終わったカップを片付けて翔太はオフィスを出ていった。
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カフ(プロフ) - namanaさん» コメントありがとうございます!もどかしいですよねヽ(;▽;)ノこれからも楽しんで貰えるよう頑張ります! (2021年1月23日 10時) (レス) id: 7548cab30a (このIDを非表示/違反報告)
namana(プロフ) - ちょっと、ふっか黙って話を聞いてほしい!!笑 更新楽しみにしてますね(*´`*) (2021年1月22日 18時) (レス) id: b11e04c615 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カフ | 作成日時:2020年12月12日 12時