12 横山SIDE ページ12
.
呑み会は中盤に差し掛かり、スローペースで呑み始めた奴らも酔いが回ってきた様子や。
俺は辺りを見回す。
Aがおらん。どこに行ったんやろうか…
あいつ、周りにかなり進められて飲みまくってたしな。
心配になり、席を外そうとした。
｢え〜どこ行くんですか〜？｣
さっきの酔っ払いの女子社員が猫なで声で絡んでくるのを適当にあしらう。
俺はトイレに向かった。
トイレは店の奥の方にあって、廊下を挟んで右側が男子、左側が女子トイレやった。
トイレの前に着くとちょうどタイミングよく女子トイレのドアが開く。
｢あ〜裕だぁ〜｣
そこには顔真っ赤にしてにたにた笑っとるAがおった。
こいつ、やっぱりかなり呑んどるな。
｢お前、呑みすぎや｣
｢だってさー、みんな呑め呑めっていうんだもん〜｣
足元も覚束無いやんけ。
Aがフラフラしながらトイレから出てくる。
｢あっ！｣
その時、少しの段差に躓いて俺にしがみつくような形になった。
｢ちょっ、誰かに見られたらどうするん？｣
｢んー？｣
聞いとるのか聞いてへんのか分からんけど、Aは離れるどころか、俺の首に腕を回してぎゅうと抱きついてきよった。
俺は辺りを見回す。
幸い、今は俺とAしかここにはおらへん。
ひとまずほっと胸を撫で下ろす。
｢とりあえずA戻れ。
あんまり遅いと怪しまれるぞ｣
俺はAを引き剥がそうとした。
せやけど次の瞬間、Aの唇が俺のと重なった。
Aが背伸びしてキスしてきよったんや。
｢？！｣
｢ふふふ〜またねぇ｣
驚く俺を後目にヒラヒラと手を振って戻っていきよったA。
俺は後ろ姿を見ながら自分の唇に触れた。
たしかに熱を帯びているのに、頭は雷に打たれたような衝撃や。
ちっちゃい頃はしたこともあるくせに。
なんやねん。一気に酔い冷めたわ…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 157人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：神八爽蘭
| 作成日時：2020年5月19日 8時
