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彼女に促され店内に入る。
内装も彼女の言うとおり本当にオシャレ。
今度裕連れてこよなんてふと思った。
席につき、注文を済ませる。
店員が厨房に行ったのを確認してから、彼女が口を開いた。
｢あ、私は茉莉香って言います。
隣の部署なんでなかなか面識ないですよね。｣
｢茉莉香さん。
今日はランチ誘ってくれて嬉しかった。
ありがとう。｣
｢いえいえ。
Aさんと1度ゆっくりお話したかったので。｣
そう言って彼女は口角を上げた。
それは先程までの可愛らしいものじゃない。
何か企んでいるような、少し不気味な笑顔。
嫌な予感がした。
彼女が続ける。
｢Aさんって、横山さんとお付き合いされてるんですか？｣
あ、やっぱり…
そういうことか。
頭の中でどう答えるか悩んだ。
付き合ってはいない。
だけど一緒に暮らしている。(居候だけど)
なんとなく、裕が私たちの関係を内緒にしたいと思っているのはわかっていた。
私も、余計なことを詮索されるのが嫌なので裕との関係は公表しないと決めていた。
この場合、どう答えたら正解なの？
｢私、この前見ちゃったんです。
会社がお休みの日に二人で会社の辺り私服で歩いてるところ。｣
｢ああ、それは…｣
｢だからお付き合いしてるのかな？って気になっちゃって…｣
彼女が話したかったことって、これなのね。
やっぱり単純に私と仲良くしようってわけではなかった。
むしろ敵対心抱かれてる？
この子、裕のこと狙ってるのかな？
見られたのはきっと浅草からの帰りだ。
会社周辺を歩いてたのを見られただけならまだ誤魔化せるかな？
私は賭けに出た。
｢私、日本が久しぶりだったでしょう？
あの日色々お散歩してたらたまたま横山くんに会ったの。
それで少し一緒に歩いたってだけよ。｣
｢本当ですか？｣
｢うん。
だから私と横山くんは何も無いから。｣
｢ほんとですか？
あの、実は私、横山さんのこといいな、って思ってて。
だから2人がもし付き合ってたらどうしようって…ほんとに、何もないんですよね？｣
｢大丈夫だから。
安心して？｣
そう言うと彼女は可愛らしい笑顔に戻った。
なんでここでこんな嘘ついちゃったんだろう。
少し後に後悔するなんてこと、この時の私はまだ知らなかった。
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作者名：神八爽蘭
| 作成日時：2020年5月19日 8時
