19 ページ19
.
裕の家に居候させてもらってから数週間。
久しぶりに会った裕は、だいぶ男らしくなってた。
本来なら新しい家を早く見つけておかなければならないんだけど、同じ会社だし、何より幼なじみだから楽なんだよね。
私は裕が何も言わないのをいいことにすっかり甘えていた。
昔から裕は私のお願いならどんなに嫌なことでも叶えてくれるんだ。
私の歓迎会は、裕が幹事を務めてくれた。
もう1人、宮内くんって子も一緒だけど。
お酒が入ったら、裕とも話せるかな、なんて思っていたけど考えが甘かった。
裕の周りはガッチリ若い女子社員がガードしている。
そして私の周りにも男性社員がまとまっていた。
会ったことのない隣の部署の人までいる。
口々にくだらない質問をぶつけてくる。
｢彼氏はいるのー？｣
｢どんな人がタイプ？｣
合コンじゃないんだから…
私は呆れつつも、愛想笑いでその場を乗り切った。
お酒が美味しいのが唯一の救いだった。
私の歓迎会ということもあってかなりの量を勧められた。
グラスが空くとすぐにお酒を注がれるし、それすら空になるとすぐに注文が入る。
断るわけにいかないし、何より美味しかったから呑みすぎたと自覚する頃にはすっかり出来上がっていた。
このままだとまずい、一旦立て直そう。
そう思ってトイレに立った。
立った時一瞬体がぐらついたので、思いのほか酒が回っているのがわかった。
気持ちよくフラフラしながらトイレに向かう。
中に入り鏡を見る。
鏡の中の自分の顔は真っ赤に染まっていた。
あーこれは相当きてる。
ふわふわした気持ちで軽くメイクを直した。
そう言えば、裕も結構呑んでるみたいだったな。
若い子たちに囲まれてデレデレしちゃって、なんか気に入らない。
裕は私の幼なじみなのに。
私のためなら何でもしてくれる弟みたいな存在なのに。
ここまで来てハッとした。
もしかして私、嫉妬してる？
それは、自分のおもちゃを取られた小さい子のような気持ち？
それとも恋愛的な、好きな人が誰かと仲良くしてたら嫌っていう…？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 157人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：神八爽蘭
| 作成日時：2020年5月19日 8時
