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不思議そうに此方を窺う櫻井さんに、取り繕うよう笑みを向ける。
｢いえ、何でも無いです。店の住所をお教えしますね｣
ポケットからスマホを取り出し、店のホームページをメッセージで送信する。
｢ご友人と歓談を楽しみたい場合は個室をおすすめします。カウンター席やテーブル席は賑やかですので｣
｢へぇ…大野さんは普段どちらの席に？｣
｢カウンター席に一人でいます。静かな場所よりも、喧騒の中で考え事をする方が性に合っているので｣
｢このお店にはよく行かれるんですか？｣
｢えぇ。先日も行ったばかりで｣
帰り際に飲んだ日本酒の香りを思い出す。この頃は週に三回のペースで通っていた。
｢もし…もし、差し支えなければ大野さんの悩み事を教えて頂けませんか。今までお世話になってばかりで…微力ながら私も貴方の力になりたくて｣
確かに、ここ数日間はその小料理屋に足繁く通っていた。
でもそれは、今日はどんな服装をするべきか、嫌味の無いエスコートはどうしたら良いかといった、貴女に纏わることなのに。
｢……仕事のことなので｣
｢あ、…そうですよね。お仕事関係は守秘義務ありますよね｣
彼女の瞳に影が落ちて、気まずそうに唇を噛む。
そんな表情をさせたかったわけじゃないのに。だからといって、僕の本心を話す気は全く無い。
男女交際の申し出───つまるところ“告白”は、ただの確認作業であって博打では無い。告白を失敗するなんてのは身の丈がわかっていない証拠だと、どこかの文豪が描いていた。
俺は机上の恋愛論しか知らないのだから、それに倣うほか無い。
異性間紛争という事件の性質上、彼女の恋愛観を何度か聞いたが、自分を冷笑したくなるくらいに僕自身と重なるところが無かった。
こんな状況で悩み事を打ち明けるなんて、良い齢になって身の丈もわからないのと笑われても致し方ないだろう。
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野乃子(プロフ) - きよさん» ありがとうございます。次のお話で、カフェで働くきっかけとなる出来事が起こります。智さんがしっかり守ってくれているので、ぜひ読んでみてくださいね。 (2022年8月1日 22時) (
レス) @page50 id: b6882cb73c (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - 野乃子さん、お話しありがとうございます。初デートからプロポーズまでの二人が純真すぎる！大好きな二人です。だからこそ相葉ちゃんのカフェでなぜ働く事になったのでしょう？まぁ、何があっても智さんが守り抜くんでしょうね！次のお話しを楽しみに待っています。 (2022年7月30日 16時) (レス) @page50 id: 93930afffe (このIDを非表示/違反報告)
野乃子(プロフ) - 紅葉さん» ありがとうございます。私もこの二人が大好きなんですよね♡おそらく次回の更新で移行になると思いますが、移行先でも読みに来てくださると嬉しいです。 (2022年2月6日 0時) (レス) @page47 id: b6882cb73c (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - はじめまして、毎話キュンキュンしながら拝読しています！野乃子先生のお話はどれも好みで大好きです！特にこの2人が大好きで、これからも2人の軌跡が読めるのを楽しみに待ってます！ (2022年2月2日 0時) (レス) id: 3663dc8009 (このIDを非表示/違反報告)
野乃子(プロフ) - きよさん» そうなんです、探偵だったんです。短編集では長さの関係上カットしていたのですが、せっかくなので公開することにしました。いつもコメントありがとうございます。次のお話も楽しんで頂けると嬉しいです。 (2022年1月26日 0時) (レス) @page17 id: b6882cb73c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：野乃子 | 作成日時：2022年1月25日 0時
