噛ませ犬のすべきこと。 ページ14
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「大丈夫。疑ってないから」
赤葦はそんな少女の頭を優しく撫でた。おかげで少し落ち着きを取り戻す少女。そんな二人を──いや、正確には赤葦一人を憎々しげに睨みつける森。ギリィっと悔しそうに口を固く結ぶ。
「んー、なんかよく分かんないけどさ、その手紙?の筆跡調べてみれば?ほら、Aって綺麗だけど少し癖のある字書くだろ」
話を聞いていた弓道部の部長がそう提案した。
「はっ、あの手紙は手書きじゃねえんだよ。パソコンで打たれたやつだ。便箋だってまんまコピー用紙だったし」
──まあ、万が一の筆跡鑑定を見越してわざとそうしたわけだし。
森は鼻で笑い、部長が出したその提案を一蹴した。その言いぐさに部長がムッとした表情を浮かばせるが、森は一切気にしていない様子で話を続けた。その目は狂気に血走っている。
「Aはな、手紙で言ってたんだ。最近帰り道が怖いって。誰かにつけられてる気がするってな」
──でた。しんじの妄想癖。俺はただ”たすけて”としか打ってないのに。脚色補正が強いんだよなあ。
赤葦は内心、呆れを孕んだ訂正をいれる。
森は続ける。
「だから俺が見守ってやってたんだ。それに手紙だって送った。俺がいるからって。いつでも見守ってるからって。Aは俺に手紙をこっそり寄越したんだ。俺だってAに手紙で返すべきだろ?俺はそう考えた。だから電話もあえて非通知設定にしてからかけたんだ。Aの両親の帰宅が遅いって言ってた日に!一人じゃないって安心させるために!実際は電話をかけたあと、なんて話したらいいのか分かんなくて黙っちまったけど……それでも、「そんなのお前のただの自己満足だろ!!今自分で言って気付かないのか!?お前のそれは、むしろただのストーカー行為じゃないか!!」
赤葦が目を見開いて叫ぶ。額には青筋が浮かび上がり、頬は怒りでヒクヒクと不規則に痙攣する。
──お前みたいに思い上がる奴が一番面倒くさいんだ。Aのことが好きなら、Aに一番ふさわしい俺との行く末を陰ながら見守っていればいいんだ。お前なんかがAと釣り合うはずがないだろ。お前なんかがAと付き合おうなんて、厚かましいにもほどがあるだろ。Aは俺のだ!未来永劫、それは変わらない!!
赤葦は怒りに任せ、森に勢い良く殴りかかろうとするも弓道部員に羽交い締めにされて止められる。
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ライア(プロフ) - あああああヤンデレぷまいーーーーーーーーーー(^q^) (2019年7月11日 0時) (レス) id: 22a2268380 (このIDを非表示/違反報告)
たなぱし(プロフ) - ぴよ曜さん» ぴよ曜さん、コメントありがとうございます!なんと、この小説で赤葦推しを生んでしまうとは…!!理想だなんて言ってもらえて光栄です!最後までお読み下さりありがとうございました(*´ー`*) (2017年8月26日 0時) (レス) id: 47f42923ee (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ曜 - この小説のおかげで、赤葦推しになりました!(笑)この小説の赤葦は、私の理想です!!完結おめでとうございます!&更新お疲れ様でした!!! (2017年8月25日 11時) (レス) id: 9123716162 (このIDを非表示/違反報告)
たなぱし(プロフ) - 審神者代理さん» 審神者代理さん、コメントありがとうございます!好みに合えば幸いです!もう赤葦さんの溢れる何でも出来る感に頼りきった作品となってしまいました笑まさにスパダリやあ…(*´∇`*) (2017年8月21日 21時) (レス) id: 47f42923ee (このIDを非表示/違反報告)
審神者代理 - 完結おめでとうございます!やっぱりここの赤葦さんは好みだなぁ…赤葦さんは何でも出来る感がすごいありますよね( `-ω-´) (2017年8月21日 21時) (レス) id: d1c49bf55e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たなぱし | 作成日時:2017年5月28日 1時